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hb@21


木ノ瀬梓は学校内で少々有名な人間だ。
部活動が盛んでない我が学校の成績を大会にひょっこり現れて上げていく。初めはテニス部を全国大会に導き、次はサッカー、どこの部活に入る事もなく噂が噂を呼び助っ人を頼む部活は運動部だけでなく文化部であるチェス部にまで及んだとか。

とはいえバスケットボールは身長という努力では補えない壁があるスポーツであり、元の部員と並ぶと頭一つへこむ彼に何が出来るのだろうかと見ていたのが1年生の夏の話。しかし軽々と細い身体で跳ねてボールを叩き落とした時、目を奪われた。


きゅ、と床とシューズの摩擦の音の後、また彼が高く跳んだ。流石だ。
練習中だけれど、そちらをついつい見てしまうほど彼の動きは鮮やかで、美しい。

見惚れていると、彼がパスを出した後、視線に気づかれてしまったのか私の方を見た。

その目はアメジストの色をしていて、目を逸らそうにも体が上手く動かない。コンセントを間違えて触った時のようにびりびりと手先が痺れる。

彼の薄い唇が確かに私に向かって動いた。

何だろう、と考えていると強い衝撃。ぐるぐると世界が周り、それから私の意識が途切れた。


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