KAHB | ナノ



I love you


現在高校一年生の冬、受験も高校に入学してからも、私の背中を押したのは眩しい彼の存在だった。
恋心に気づいたとはいえ全寮制である星月学園はここから大分遠くて、街でバッタリも期待できない。

忘れはしない12月20日、木ノ瀬梓の事を考えて堂々巡りしなくても良い練習試合の日で、相手校が遠いため各自一番近いルートで行けるようにと現地集合だった。

馬鹿みたいに笑ながらコンビニの前で肉まんを頬張ったのは一昨年の事だ。その時と同じく町はクリスマス一色で、その空気のせいか恋人が目立つ。キリストの誕生日より私は彼の誕生日の方が大イベントなので、意味もなくツリーを片っ端から倒していきたい衝動に駆られつつぼうっと電車を待つ。

向かいホームには見るからに弓を持った集団がいて、彼らも部活なのだろう。私はジャージでは何部かわからなくても弓道部は弓ですぐわかる。
そういえば彼は弓道を長くやっていたと言っていたか、とその集団を見ていると、ちらりと黒髪見えた。

幻覚かと思って目をこする。

緑の網ではなくて、線路を挟んだ向こう側

もうやらないと断言した弓をもって、同じジャージを着た人と談笑する、今日誕生日の彼。

「木ノ瀬梓!」

思わずその名前を叫んだ。

人々が一斉に振り返ると同時にこちらのホームに電車が到着した。考えるより先に階段へと走っていて向かいのホームへ続く駆け降りた。運動部をなめんなよ。

見間違いではなく、少しだけ背が伸びて大人びて、前髪は短くなったけど彼がいた。

隣の眼鏡の人も「木ノ瀬、知り合いか?」と聞いている。

「名前さん?」

私と同じくらい彼も驚いている。私がコンビニのクリスマスケーキをを渡した時と同じだ。

想いを伝えるのなら今しかない

「木ノ瀬くん、お誕生日おめでとう!それと、」


さん、はい



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