※ああ君には伝わらない


深く暗い場所。
光も差さない様な、暗い、くらい…

そんな場所で俺はポツンと独り、立っていた。





(なぁ、ラグナ。お前はもう分かってるんだろ?お前の存在は決してカルルを幸せに出来やしない、お前が与えてやれるのは不幸だけだ)

頭の中で声が響く。とても、粘着質な、嫌な、まるで相手をじわじわと絞め殺す様な、そんな声に首筋がぞわりとする。

「ち、違…」

(何が違う?どう違う?痛々しいあの姿を見てみろ。全部お前が付けた痕だ。あんなにも無邪気で無垢で純真だった子をお前は汚したんだ)

「あれは…俺じゃ…」

(否定するのか?お前には無理だ)




(ほら、だって、見てみろよ。お前の手…)










(真っ赤に染まってるぞ)








「…あ…ぁあぁっ…うわあぁぁぁぁぁぁああぁぁっ!!!!!!!!!!!!」









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「…さん、…ナ、ん…」

声が聞こえる。少し震えた、幼い声が。

「ラグナさんっ!」

トンと腹部に重み。手だけを動かし、己の名を呼んだ少年の頭をくしゃりと撫でてやる。
淡い水色の髪がサラリと指の隙間から流れ落ちてゆく。

「…カルル?」
「こわかった」
「カル…」

どうしたの?って、もう一度名前を呼ぼうと思ったけれど、カルルの表情に言葉を詰まらせてしまう。

「こわ…かった、怖かった!ラグナさんが、どこかに連れて行かれちゃうんじゃないかって、そればっかり、嫌な予感しかしなくて…っ、それでっ…」

そこまで一息で言うと、今まで溜め込んでいた物が溢れ出すかのように堰を切って泣き出してしまう。ぼろぼろと溢れる涙のなんて綺麗な事か。
普段から澄ましているからなのか、こんなにも取り乱したカルルを見るのは初めてだ。

「ラグナさん、ラグナさん、行かないで下さい。僕を置いて行かないで下さい。置いて、逝っちゃうのはもう…二度と、ごめんだ…」

ぼろぼろと、流れる涙と一緒に本音がぽろり、ぽろりとカルル自身の口からこぼれる。

「駄目だよ。ダメなんだ。僕を置いて行くなんて駄目なんだ。行くなら、僕を殺してよねぇ、ラグナさん…」





そっと俺の手を掴み、自分の首にその手を添えるカルル。
ゆっくりと唇が弧を描き、無垢な笑顔を浮かべる。




あぁ、もう駄目なんだ。
俺達が出会った時から、君は狂ってしまったんだ。


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段々とカルルの純真さが歪んだ方向へと進み始めたみたいな。





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