※人形師の些細な戯れ



ゆっくりと、それはもう価値のある壷やら精巧な硝子細工を触れる様に優しく、人形師は手を取る。

椅子に腰掛けた人形は瞳の奥に喜悦を滲ませながら、跪き己の手を触る人形師を見た。
目元は仮面で覆われており、表情はあまり分からないが、普段より僅かに口角が上がっている。やはり楽しいのだろうか、そこまで考え人形は思考を止めた。いや、正確には止めざるをえなかった。
元々肌を露出している部分が少ないのもあり、手を触られているという意識からか他へ意識が回っていなかった。唐突に首筋を撫でられピクリと体を震わせる。その反応が楽しいのか、人形師の口が弧を描く。
手は己の熱をじわじわと奪っていく。手袋をしているから体温なんてと思ったが、それは間違いだった。人形師の手は人形の己のそれと比べても酷く冷たく無機質だ。

「…っ」
「どうした?ハザマ」
「いや、何でもありません、よ」

酷く無機質で冷たくて機械みたいだと思ったけれど、そんな手がこんなにも優しく触れる事が出来る筈がない。そう思えば思うほど、その手を愛しく感じる。

人形師が何も己に感情を抱いてないとしても。



あぁ、あぁ、時間よ巻き戻れ

この感情が気付く前に




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パパは自分の作品の点検をしてるんですよ






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