※5/5 side.H



「明日さ、ゆっくりしていいから」

少年の口から紡がれた言葉を聞いて、ハザマは手入れをしていなナイフを落とす。サクリと軽い音を立てて、少し年期の入った木の床に突き刺さる。

「どど、どういう風の吹き回しです、か?」
「………………別に」

そこで会話は途切れてしまい、少年…カルルはベッドに潜り込み、眠りについた。ハザマは言葉の真意が掴めず頭を抱えていると、気付けば部屋に朝日が差し込んでいた。

「あぁ…なんという事でしょう…」

眠気に負けそうな瞼を擦り、改めて腕時計で日付を確認する。

『5月5日』

この日は何か特別な日だっただろうか…?考えを巡らせながら、すやすやと眠るカルルへと視線を移す。穏やかな寝顔に思わず口元が緩み、ハッと我に帰る。うっかりいかがわしい気配でも出してみろ、敏感な少年はすぐにでも目を覚まし容赦の無い人形の一撃を叩き込むだろう。今一度、気を引き締めてから、カルルの寝顔を見る。普段かけている眼鏡を外しているからなのか、普段より幼く見えるその顔は庇護欲を掻き立てるのには十分だと思った。

「でも、貴方は守られるのは嫌いでしたね…」

精一杯背伸びをして、大人と同等になろうとする少年。「ただ、お前と対等でいたいだけだ」と言われた言葉。思い出せばじわりと胸が熱くなる。

(彼の為に何かしてやれる事は無いのか?)

ふと胸の内に生まれた感情。
そして、考えるより先にハザマは行動に移した。

テーブルの上に、「少し用事が出来ましたので出掛けます。日付が変わるまでには戻りますのでご心配なく」とメモを書き残し、ハザマは朝の冷え込みをまだ感じさせる早朝から宿を出て行った。



数時間後、そのメモを見てカルルが勢い良く破り捨て腹を立てたのは言うまでもない。

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はじゃかる誕その1




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