朝、私の調子はすこぶる良い。

「おはようアンジェリーナ!」
「なまえ…?朝から元気ね」

そんなあんた久々に見たわ、とあくびをして眠そうにしながらそう言った。今からアンジェリーナはクィディッチの練習…は、なかったんだそうだった。だってさっき、同じくクィディッチの選手であるはずのジョージがそう言って…。…ジョージ!

「えへへへ」
「何よ気持ち悪いわね」

思わず口元も緩むというものだ。先ほどのやり取りを思い出すだけで、私は世界で一番幸せになれる。何を隠そう、私はジョージと仲直り?をしたのだ。そしてずっと(と言っても2、3日だけど)話していなかったジョージと話をしたのだ。そしてなんと、ジョージが寂しかったと言ったのだ。抱きしめてくれたのだ。考えるだけで、尚更にやにやしてしまう。仲直りしたのね、と確信をもって言ったアンジェリーナに肯定の言葉を伝えてありがとうと言えば、よかったわね、と笑ってくれた。そうやってしているうちに時間が過ぎて、身支度を終えて朝食をとるために大広間へ向かった。

「おはようなまえ、アンジェリーナ」
「フレッド!おはよう、ジョージは?」

大広間に入ってきてさっそく話しかけてきたのはフレッドである。迷いなくそう伝えた私を見て、フレッドはにんまりと笑った。仲直り…というか、元の私たちに戻ったことを察したらしい。フレッドは先に席についてしまったアンジェリーナのところへ向かおう、と私の肩を組んで歩き出した。もちろん、アンジェリーナの隣にはジョージがいた。ていうかこれ肩組む必要なくない?あ、でも相席に行くならフレッドと同じところに行かなきゃ。

「おはようジョージ!」

ジョージの目の前の席について、今日も無意識に全開になる笑顔と共にあいさつを済ませると、ジョージもおはようと笑って返してくれた。相席に座るジョージがこっちをみて、いつも通り笑ってくれることが幸せで幸せできゅんとして思わずおなかを抑えた。う…今日もかっこいいジョージ…!毎朝の挨拶がこんなに幸せなことだと思わなかった。好き。隣ではフレッドが、相席になったアンジェリーナに話しかけている。戻ってきた日常。遅れてやってきたリーも一緒に、いつも通り和気あいあいと朝食を済ませ、みんなで一緒に次の教室へ向かった。

「あれ…ジョージ達はあっちに座るの?」
「空いてないからじゃない?私たちはここに座りましょう」

教室に入ると、ジョージが後ろの三人席に座ってしまって、その隣にフレッドとリーも座った。必然的に私とアンジェリーナは三人から離れたところに座った。そのくらい何も気にならなかった。ただ、その日のすべての授業がそうだった。いつもは遠くに座ったり近くに座ったりバラバラなんだけど、この日はたまたま席の飽きがなかったんだろう、って何も気にしてなかったけど。その日の昼食、夕食。いつも隣に座っていたけど、その日はジョージと隣になってご飯を食べることはなかった。私の隣は、アンジェリーナか、リーか、朝のようにフレッド。それから、そんな日が一週間続いた。何も気にすることじゃなかった。だっていつも通り話すし、クィディッチの練習で会えなくても、その次の日にはいつもみたいにおはようと笑いかけてくれる。ジョージは何も変わらない。避けられてない。席だって、きっとたまたまなんだろうけど。私の勘違いだろうか。
ジョージが、全く私に近寄らない。

「ねえジョージ、課題やった?よかったら図書館で一緒にやらない?」
「やる。フレッド、お前は?」
「俺も行く!」

助かった、と笑うジョージは今日は髪に寝ぐせがついているだけでいつも通りだし、一緒に勉強しようって誘ったらちゃんと乗ってくれるし。別に避けられているわけじゃない。ジョージ、フレッド、私と並んで図書館に向かう。ああ、まただ。ちゃんと話してるのに、ジョージと距離が遠い。図書館で席をとっても、ジョージは私の隣に座らずフレッドの隣に座った。でも、決して私を避けたりはしない。普通に話しかけてくれるし、課題のことも聞きあって、三人で一緒に課題を進めた。

「この本返してくる」
「うん、いってらっしゃい」

珍しく三人真面目に課題に取り組んでいると(だいたいいつも双子が飽きてやらなくなる)、フレッドがそう告げて席を立ちあがった。そこで、ふと気づく。いつぶりだろうか。ジョージと二人きりになったのは。仲直りのようなものをしたあの日、談話室で離した日以来だ。ああ、そういわれてみれば。あの日以来、ジョージに触ってない。もともと手をつないだりとか、そんなのみんなの前でしないし、それどころかあまり触れ合ったりする方じゃないけど。肩に手を置かれたりとか、頭を撫でられたりとか、違和感なく、フレッドが私にするのと同じように肩を組まれたりとか。朝食とか授業とかで隣の席になった時、距離が近いからたまに私の肩がジョージの腕の部分に当たったり。そんなの、全くない。真面目に課題を進めているジョージをぼーっと見ながら、そんなことを考えていた。あまりにもガン見していれば、それは気づかれるわけで。何?とこっちを見たジョージにきゅんとする。まあでも、私の勘違いかもしれないし。

「ジョージ寝ぐせついてるよ」
「え、気付かなかった」

どこ?と寝ぐせのついているところと全く違うところをふさふさと触っているジョージに思わず笑ってしまった。ここだよ、って、教えてあげようと寝ぐせに触れようと手を伸ばした。

「…、え」
「あ…ごめん。自分でなおす」

なのに、その手がジョージの髪に触れることはなくて。伸ばした手を、反射的にパシンと払われてしまった。思ってもみなかった行動に動きも、思考も停止する。ばつの悪そうな表情をして目をそらしたジョージは謝っているけど、その謝罪がどういう意味なのかが分からなくて。少なくとも拒絶されたという事実に、ショックを受けていたら、フレッドが戻ってきた。そのあとも三人で課題をつづけたけどもちろん進むわけもなく。何かしたのかな、とか。なんで、寂しかったって言ったのに、仲直りしたと思ってたのに、とか。ただただ、不安になるばかりだった。



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