「こんなところで、1人で何してるの?」

不意にかけられた声に、驚いて目を開けた。そして、目の前にいた人物に、今までの何よりもびっくりした。

「…え」
「あ、起きた」

おはよう!と何故か元気にあいさつをしてくるその人を見て固まる。さらさらと風に流される髪は、赤色である。いつも二人セットになって行動しているのに、今目の前にいるのはどちらか一方のみ。私の顔を覗き込んでじっと見てくるから、思わず後ろに後ずさりした。え、なんでここに。っていうか、私に話しかけて…。周りから見たらそうは見えないかもしれないけど、私の頭の中は大パニックである。

「えっと…」
「よくディゴリーと一緒にいる子だろ」
「え」
「ディゴリーのコレか?」

小指を突き出して、にやにやと笑いながら迫ってくるから、心臓に悪いと思いながらも、ウィーズリー君が言った言葉に全力で首を振った。

「ち、違う!セドリックくんはチョウといい感じだから、私はただの友達で、何も…!」

いつも遠くから見ている私にとって、1mもないウィーズリー君との距離はあまりにも近すぎて若干目をそらしていたけど、その言葉に思わず全力で首を振った。初めての会話なのに、突然勢いよく話し始めた私に驚いたらしい。びっくりした表情を浮かべて言葉をとめたウィーズリー君を見て、ハッと我に返った。

「あ…えっと、突然ごめん…なさい」
「…いや、そうだったのか!てっきりディゴリーの彼女なのかと思ってたぜ」
「違うよ。一回もそういう風に思ったことないし、セドリックくんも私は絶対ないし」

どうにかわかってもらおうと、あの手この手を考えるけど、結局口から出てくるのは同じ言葉ばかりだった。半分あわてながら言う私を見て、何故か突然ウィーズリー君が笑い始めた。それをみて、話していた口を閉じ、彼を見た。

「必死だな」
「…!」
「分かった分かった、二人は友達なんだな」

必死、と言われて、自分がどれだけ焦っていたかを思い知らされて、恥ずかしくなって勢いよく視線を逸らした。は、恥ずかしい…!そこまでムキになって言わなくてもいいだろうに、私は何をこんなに必死になっているのか。相手が、ウィーズリー君だからだろうけど、さっきまでの自分を思い出して、穴があったら入りたい、と思った。恥ずかしくて、笑い続ける姿を見続けていられなくて、話題を変えようと疑問に思っていたことを口にした。

「…あの、どっち…?」
「え?ああ、どっちだと思う?」

試す様な声で私にそう尋ねた。質問を質問で返すなんてどういう訳だ。と、思いながらも、頭ではどっちだろうなんて考えていた。パッと出てきた名前は、さっきチョウから聞いた、自分が見ているらしい方の名前だった。

「フレッド君?」

あっさりと言葉が出てきたことに自分でも驚いた。たぶん、自分の中の願望も交じっていたと思う。当てる気はあまりなかったし、思いついた名前を言っただけだった。私の言葉を聞いて、ちょっとだけびっくりした表情を見せたウィーズリー君を見る。あれ、もしかして当たってた?

「…残念。俺はジョージだよ」
「あ…そっか。ごめんね」
「間違えるのは当然さ。だって、ママでも俺たちを見分けられないんだからね」

間違えられるのには慣れているらしい。というか、全然これっぽっちも気にする対象ではないらしかった。間違ってしまって申し訳ない、という気持ちも、彼の態度を見てすぐに消え去った。ただ、胸の中に、自分でもよくわからない小さなもやもやが少しだけ残った。

「きみの名前は?」
「みょうじなまえです」
「どっちが名前?」
「あ、なまえ!」
「そうか!なまえ、よろしくな」

始めて彼らを見て、ずっとずっと焦がれて、約6年。ずっと好きだったフレッド君ではなかったけれど、私はこの時初めて、一緒にあこがれてきた双子の片割れと出会ったのだ。



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