ちゅんちゅん、と鳥のなく声が聞こえてぼうっとする意識の中うっすらと目を開ける。差し込んでくる光がまぶしくてわずかに眉間に皺を寄せるが、目をこすって再度開ければその光にも慣れてくる。

「朝…?」

おかしい。いつもは起きる時間になれば、なまえが作った朝食の僅かに纏わせながら起こしに来るのに、今日はいつもの声が聞こえない。俺の名前を呼んで必死に起こそうとする愛らしい声を聞くのは毎朝の楽しみでもあるから、たまに寝たふりを続けることもある。それが、今日は自ら目が覚めるなんて。自分がただ単に早く起きてしまっただけだろうか。それならばもう一度、彼女が起こしに来るまで寝てしまおうか。まだ覚醒しきってなかった意識の中、ゆっくりと目をつむる。すると、暖かくなった布団の中で、もぞ、と何かが動く気配がした。

「…なまえ?」

いまだ眠りについているなまえが自分の隣で布団にもぐっているのを確認して、いつもは別のベッドで寝ているのに、と昨晩の記憶を探った。…ああ、そうだ。昨日は確か、一緒に寝たいといったなまえの言葉を聞いて、うれしく思いながら彼女をベッドの中へ招いたのだ。抱きしめるようにして眠りにつこうとすれば、腕の中で彼女が幸せそうに笑ったのを覚えている。その笑みに自分自身も満たされるのをかんじながら眠りについたのだ。眠っていたことで離していた手をもう一度なまえの体に巻き付ける。ぎゅうっと引き寄せれば、布団の中でなまえが身じろぎした。

「ん…ジョージ…?」

眠たそうに眼をこすりながら、半分も開いていない目で俺を見て、いつもよりいくらか小さい声で俺の名前を呼んだ。おはようなまえ、と小さく返事を返すと、なまえの眼元が嬉しそうに細められる。もぞもぞと動こうとするなまえに気付いて、抱きしめていた腕を緩める。すると、なまえの腕がよたよたと布団を少しだけ上にいた俺の肩にもかかるようにずり上げ、そのままぎゅっと俺の首に巻き付けた。ぎゅうっと抱きしめてくるから密着して、なまえの顔がすぐ下にある。

「ジョージだ」

嬉しそうにまた笑ったなまえは、俺に抱き付いたまま、また目をつむってしまった。くらりとめまいがしたような感覚に襲われた。なんて幸せそうな顔をするのだろう。なんて嬉しそうに俺の名前を呼ぶのだろう。抱き付いてくる腕は暖かい。なまえからの想いが伝わってきて、自分の中が温かいもので満たされていくような気がした。密着してくるなまえの腰に再度腕を巻き付け、引き寄せるようにぎゅっと抱きしめる。シングルベッドに二人、しかも背の高い俺がいるのに、密着しているせいで、狭いはずのベッドがむしろ広く感じた。

「しあわせ…」

目を閉じたまま、嬉しそうにそういって、また眠りについてしまった。らしくもなく、ドクドクと鳴り続ける鼓動の音が彼女の眠りの妨げになってはいないだろうか。幸せだと言った彼女に、自分自身もこの上ない幸せを感じた。愛されている。そう感じさせてくれるなまえが、何よりも愛しかった。腕の中で再び眠りについてしまったなまえの額にキスを落とす。それだけでは足りなくて、少しだけ腕を緩め、近寄ってなまえの唇に口付けを落とした。触れるだけのキスをした後、もう一度今度は長く口付けてぺろりと唇を舐めた。そして、なまえの後頭部と腰に腕を回して、ぎゅうっと強く抱きしめた。
愛しい。愛しくて仕方がない。俺の大切な人。

「おやすみ、なまえ」

眠ってしまったなまえのつむじに唇をそっと寄せて、そうささやく。寝ているはずのなまえが応えるように身じろぎをして、それを感じて思わず口元を緩める。いまだ囀り続ける小鳥の鳴き声を聞きながら、再び眠りにつこうと自信も目を閉じた。



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