ハリーもロンもハーマイオニーも同じ寮だった。よかった。と思いながらも、私は自分の右側にいる人に全神経を注ぎすぎて気が気じゃなかった。左にいるロンが話しかけてくれるまで、自分からしゃべりかけることもできなかったほどだ。

「なまえ、どうしたの?食べないの?」
「たっ…べる。食べるよ!食べる。たべます」
「え?あ…うん」

慌てて返事をして、あからさまにしっかりとロンの方を向きながら、お皿に食事をもりもりと盛っていく。あははは、と笑いながら勢いよく盛っていたせいで、自分の皿を再び見たときに、盛りすぎた、と後悔した。こんな量食べれないじゃん…。

「よく食べるんだな。僕の分もやろうか」

聞こえた声は、やはり間違いがない。ダイナソーの君の声である。ギギ、と機械的にそっちを向いて、恥ずかしさに耐えながらも、大丈夫です、と機械的に答える。新入生だから緊張していると勘違いしてくれたのか、はは、と笑ってこっちを見てくれる。その笑顔にキュンとする。や、やっぱかっこいい…!

「そういえば、君はどこの国の人なの?」
「に、日本です…」
「なるほど!ニホン人は黒髪なのか!」

知らなかった!と、くるくる表情が変化するから、変な意味で緊張しっぱなしだった。顔をそらすと絶対変に思われるし、そう思われたくないし、でも恥ずかしいけど見ていたいけど緊張するけどどうしよう…!と、大いに混乱していると、話しているダイナソーの君の後ろからぴょこん、と誰かが顔を出した。

「え…」
「なんだ!ジョージ、知り合いか?」
「まあね。この前会ったんだ」
「ふーん、どこの人?」
「ニホン人だよ、今聞いたばっか」
「そうか!ニホン人は黒髪なのか!」
「フレッド、ジョージと全く同じことを言ってるよ」
「仕方ないじゃないかロニー坊や、俺たちは…」

ロンも交えて、三人で話が繰り広げられる中、私は一言も発さずに、その人をまたまた唖然と見ていた。ポカーン、と口を開けてみすぎていたのか、その人もこっちを向いた。

「なんだなんだ、顔が赤いぞ。もしかして俺に惚れ…」
「ダ…」
「なまえ?」

もう一人の人がこっちを見て、冗談を言って。呆然とする私の名前をロンが呼んだのに気付かなかった。

「ダイナソーの君が…二人…」

途端、シーン、と誰も話さなくなった。ハッとして我に返る。静まってしまった三人をみてあたふたと慌てふためくが、何の甲斐もなかった。

「なまえ、ダイナソーの君って?」

ロンが口を開いてくれて、あ、と声を上げロンをみて、そして反対側を見る。きれいで全く同じ顔が二つ、じっとこっちを見ている。それはやめてほしい死んでしまうよ私が。そんな意思が伝わるはずも、その視線を受け流して反抗できるわけもなく。渋々ぼそっと小さな声で呟いた。

「ま、前にダイナソー横丁で迷子になってるの助けられて、それで」
「ダイナソー横丁?」
「うん、それで」
「まって、なまえ。そのダイナソーって、もしかして」

不思議そうに三人が見てくるから、私も不思議に思ってロンに、うん?と返事を返した。そしたら、隣のダイナソーの君が口を挟んだ。

「それって、ダイアゴン横丁のことか?」

ぷは、っとその人によく似た人が、たまらないとでもいうように噴出した。それと同時に、ダイナソーの君も笑い出す。ロンも後ろで笑い出して、私は唖然としてしまった。

「なまえ、ジョージと会ってたんだね。ダイナソー横丁で」

ロンの発言と共に、よく似た二人がより一層おかしそうに笑いだした。すでに赤かったはずなのに、自分の顔がみるみる熱くなっていくのを感じて、思わずうつむいた。

穴があったら入りたい。というか潜って二度と出たくない。私は今、まさにその言葉通りの気持ちだった。



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -