ドラコ・マルフォイくんがハリーとロンに話しかけていた。ロンを見て、赤毛で分かるぞ。ウィーズリー家の者だろ、と一発でロンの名前を当てて見せた。すごいと思いつつも、ふと引っかかる。なんだか、マルフォイくんの言い方は、赤毛であることが"ウィーズリー家"である者の特徴である、というような言い方だ。

「ねえロン、兄弟っているの?」
「たくさんいるよ!僕を入れて7人」
「え?多いね!」

大広間の扉が開く。見たことのない大きな広間に圧倒される。まあ建物自体も物騒な大きすぎるお城、って感じだけど、中身もさらにすごい。中には生徒がたくさんいて、独特の雰囲気に思わず呑まれそうになる。集団に流され歩くと、ここでは新入生であるからだが、また視線を感じる。勘違いかもしれないけど、なんだか視線を集めている気もする。日本人がそんなに珍しいかな…。やっぱり大量の視線を集めるのは苦手なので、隣を歩くロンをあからさまに見て話しかけたら、そんな答えが返ってきた。赤髪であるから、と勝手に期待していた。そんなはずはないけど、もう一度会いたいと思っていた。ていうか、よく考えてみたらダイナソー横丁にいた時点で魔法使いじゃないの?そんなに歳が離れているようにも見えなかったし、もしかして…この学校の生徒?で、赤毛が特徴なのはロンの家の特徴で…まあ、これも期待からくる都合のいい推理としか思えないが。彼の顔を、もう一度思い浮かべる。もしかして、ロンの兄弟にダイナソーの君がいたりして…

「なまえ、呼ばれたよ!」
「え?」

考え込みすぎていたらしい。寮分けで名前を呼ばれたことに気付かなかったらしく、ロンに声をかけられて慌てて壇上に上がって、組み分け帽子をかぶる。私はどこに行くのだろうか。ド緊張であたふたしていた自分と話してくれた友達。ハリーやロンや、ハーマイオニーたちと一緒がいいなあ。そんなことを思っていると、ぶつぶつと帽子がしゃべっているのが聞こえた。うわ、しゃべる帽子だ!珍しい、日本のお嬢さんか…とぶつぶつ言ってるのが聞こえてなんとなく上を見ようと視線を上げると、今までにないくらい大量の視線を集めていることに気付いた。瞬時に肩が上がる。有名になったとかそういうわけじゃないけど、ここ最近注目されてばかりでそろそろ視線恐怖症とかそんな感じのものにかかりそうだ。そうだ、意識せずにそこらへんを見てればいいんだ!そう思いながら視線を泳がせると、ハーマイオニーを見つけた。あ、ハーマイオニーだ。あそこの寮がいいな、できたらそこにハリーもロンも来てくれたらうれしいなあ…なんて、ハーマイオニーから少し視線を動かしたら。
目に入ったのは。

「ダッ…!」
「グリフィンドール!」

途端、完成と拍手に声が揉み消された。思わずあげてしまった声を遮ってくれた組み分け帽子の声と、謎の歓声に深く感謝しながらも、心はそれどころじゃなかった。たぶん、顔も唖然としていた。何が起こったかよくわからないまま、私はある一点を見つめたままだった。半分以上帽子に隠れてはいるけど、赤髪だ。周りの人たちと一緒にこっちを楽しそうに見ている、あの時と変わらないきれいな顔は。

「早くグリフィンドールのところに行くんだ!」

帽子に、じれったい、とでもいうようにせかされて、慌てて席を立ってその人の近くに行く。壇上から降りて、誰かの名前が呼ばれる。一歩、一歩、踏み出す時間がどのくらいにおもえただろう、それくらい長く感じた。一歩一歩、近づいていく。楽しそうに笑ってこっちを見て、全員そうしてくれているはずなのに、わたしにはその人しか見えていなかった。吸い寄せられるように、呆然としながらその人の隣に行けば。

「あの時の子か!新入生だったんだな」

よろしくな!と肩をポンと叩かれた。思考がピシリと固まってしまって、返事をすることができなかった。

「なまえ!よかったわ、同じ寮ね!」
「僕は監修性のパーシーだ。グリフィンドールへようこそ!」
「よ、よろ…おねがいしま…す」

ハーマイオニーとか、その隣にいた赤毛の人とか、たくさんの人が声をかけてくれたけど、私はダイナソーの君の隣に座ったまま、隣にいるその人を意識しすぎて、緊張や焦燥やいろんな感情が混ざり合って、二つ返事や曖昧な言葉しか返せなかった。すぐ隣にいるダイナソーの君は、切り替えて、次にグリフィンドールと呼ばれた人に嬉しそうに話しかけている。その間も私だけはずっと下を向いていた。周りの声も遠く聞こえて、ただ自分の顔が熱い事だけを理解しながら、必死に自分を落ち着かせていた。

よろしくな、といって、笑いかけてくれたその人の笑顔が、頭から離れない。



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