ハグリッドの所に向かった時には、ロンはもう大分落ち着いていた。ハーマイオニーがハグリッドの前に立って落ち込んでいるように見えたから、大丈夫?って声をかけたら勢いよく抱き着かれてしまったので、倒れないようにふんばった。どうしたのって声をかけても、ぎゅうっと抱き付いてくるものだから、意味は分からなかったけどハーマイオニーがとてもかわいく思って、私も抱きしめ返した。ハグリッドが私とハーマイオニーに、自信を持ったらええ、と慰めてくるものだから、状況は呑み込めなかったけどありがとう、と返しておいた。ハグリッドは本当に和むなあ。やさしい、大好き。それにしてもハーマイオニーは大丈夫かな。あとロンもずっと気持ち悪そうだ。

「なまえも気にするんじゃねえぞ。穢れた血なんて呼ぶ奴の方がおかしいんだ」
「…うん…?」
「どう考えてもなまえ意味わかってないだろ」

やっとの事で少し顔色が良くなってきたロンが口を挟んだ。よく察してくれました友よ。その通りです。ジョージ先輩やフレッド先輩、ロンもそんな風になるくらい怒った一言である。ハーマイオニーも落ち込んでるし、悪い意味だという事は分かるけど…。言いにくそうにロンが説明してくれたけど、その声が怒りを帯びていて、その言葉の意味を知ってショックを受けるよりも嬉しくなった。ハリーもロンもハグリッドも怒ってくれた。ジョージ先輩もフレッド先輩もすごく怒ってくれた。ハーマイオニーは自分だって嫌なのに私の心配までしてくれた。マグルの血が入っていなかったら魔法族は今頃絶滅している、といったロンの言葉に笑ってしまった。大丈夫。みんなが怒ってくれるから、私全然悲しくないよ。

「大丈だよハーマイオニー。マルフォイ君は私が叱っておいたからね、元気出してね」
「え、叱っ…」
「落ち込まないでね」

よしよしと抱きしめ返しながら背中をぽんぽんと叩くと、ロンとハリーが不思議そうな、驚いたような表情で見てきた。叱ったというかうっぷんを晴らしたという方が正しいかもしれないからちょっとだけ語弊があるね。ごめん叱ってないや、嘘ついたわ。なまえどういうこと?って聞きたそうにしている二人に説明しようとしたら、マクゴナガル先生が入ってきた。ロンとハリーの罰が決まったみたいで、お互い嫌な顔をしつつ了解して、とりあえずみんなでハグリッドの家を後にした。そのあと私は休日を課題をして過ごして、いつもと何ら変わらない日常を過ごした。二人は罰則を受けていて、かなり疲れた表情で帰ってきた。ハリーはなんだか…疲れたというよりも、何か言いたそうな…ロンはひたすら疲れてるし。話す余裕はなかったみたいで、談話室のソファでハーマイオニーと一緒にいたけど、隣を素通りして男子寮に向かった二人を目線で見送った。お疲れ、って言ったら、二人ともふらふらしながら手を振ってくれた。

「どうしたのかしらね。何か言いたそうだったわ」
「あ…ハリー?私もそう思ったけど…」

気のせいだと思ってたけど、ハーマイオニーも同じことを思っていたらしい。疲れているだけかと思ってたけど、ちょっと深刻な顔をしていたような…確かめる暇もなく二人は戻って行ってしまったけど。私たちもそろそろ寮に戻りましょうか、と声をかけてきてくれたハーマイオニーに頷き、寮に向かった彼女の後に続いた。ハーマイオニーの隣に位置付けてある自分のベッドに潜って、おやすみ、と声をかけて目をつむった。

「…寝れない」

しばらく目をつむっていて寝る努力をしていたのに、全く寝れそうになかった。目を閉じたままベッドに潜って、どのくらいの時間が経ったのだろうか。たぶん、一時間くらいは寝れないままだ。ほかの人もねているから、すごく小さな声でハーマイオニーに声をかけてみたけど、彼女はもう寝ているらしい。当たり前か。なんでこんなに寝れないんだろう。静かに起きて、別に意味はないけど杖と、あと毛布をもって談話室に向かった。土曜の夜だからまだ誰か起きてるかもしれない。起きてなくても、寝れないから暖炉のそばで暖まろう。ゆっくり、音をたてないように足を進める。すると談話室からうっすら明かりが入ってくるのに気付いた。いつもみたいに明るくはないけど…誰かいる。そっと覗いてみると、暖炉にだけ火が灯っていて。同時に見えたのは、見慣れた赤だった。ふたつじゃなくて、一つ。どくん、心臓が音をたてた。

「先輩…?」

後姿だけじゃどっちかわからなかった。フレッド先輩だとしてもすごくうれしいんだけど、ジョージ先輩だったらいいな、なんて思ってしまうのは無意識である。私の声に反応して振り向いてくれたのに、部屋が暗くて暖炉の明かりしかないせいでどっちなのかが判別できなかった。ソファに向かって歩きながら先輩を見ても、私の問いかけに返事をすることはなく、声一つ発さないまま。暖炉の火の明かりが先輩の髪も肌もうっすらと照らしていて、とても綺麗でドキッとしてしまった。
少しだけ、静寂。



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