ジョージ先輩から手紙が来た。フレッド先輩、ハーマイオニーやロンからも。ハリーからは届かなかったんだけど…どうしたんだろう。私も送ったけど、届かなかったのだろうか。まあ、学校であったらまた聞こう。どれもすごくうれしくて、大急ぎで手紙を返した。フレッド先輩からの手紙の中には一枚の写真が入っていた。そこには双子とロンと、あと…妹だろうか。女の子が楽しそうに台所と思われるところで話している写真だった。だんだん慣れてきたが、魔法界の写真は動くのだ。楽しそうに笑って肩を組む双子を見て、おもわず口元が緩んだ。久々に見た。大好きな先輩と、みんなの姿。ロンをからかうようなやり取りの後、二人そろって悪戯そうに笑った表情とか。自分がついこの間まで見ていたものと何も変わらない。相変わらずだなあと思った。それと同時に、変わらないなあ、って嬉しくなった。

「なまえ、飛行機の予約取っておいたわよ」

約一年使っていなかった、もはや懐かしさすら感じるようになった自室で手紙を広げていたら、控えめにドアを開けたお母さんが声をかけてきた。ありがとうと声をかけながら、写真を机の上に置いた。もちろん、ダイアゴン横丁へ行くためのチケットである。日時はハーマイオニーが手紙で指定してくれたのでそれに合わせた。そのあとはホグワーツへ行くためにまた飛行機のチケットを取らなくてはならない。こう、どこでもドアみたいな物は魔法界にないのだろうか。それか、瞬間移動みたいな。今度先生に聞いてみよう。

「そういえばお母さん、白米ありがとう」
「迷ったのよねえ。炊飯器はいる?」
「大丈夫…というか、たぶん使えない」

マグル界の電子機器は使えなかったはず。ちなみに火を出す魔法は教えてもらった。もちろんジョージ先輩にである。お米も、この夏休みでお鍋をもっていって新学期に焚いて食べるつもりだ。あっ…塩とか胡麻とか持って行こう。禁止されてないよね、別にいいよねお米くらい。日本人にずっとパン生活はやっぱり辛いものがある。また送ってねとお母さんとお父さんにはもう頼んである。

「それ…凄い。おばあちゃんので見たことあるけど、何度見ても慣れないわ」
「私も。動く写真とか聞いたことないよね」

私の近くまで歩み寄ったお母さんが、机の上にあった写真を手に取って物珍しげに眺めた。お母さんは、魔法という存在を話では知っていたらしい。それはもちろんおばあちゃんから聞いていた話で、お母さんが実際目にしたことのある魔法や魔法道具は実際には少ないらしい。数少ない中に写真も含まれていたみたいで、お母さんも実際その写真に納まったことがあるらしい。今度見せてもらおう。そう思っていると、お母さんが写真から視線を外してこっちを見たので、私も見返す。

「友達?それとも好きな人?」

赤みを帯びた髪色を見て、兄弟だと察したのだろうか。どの子?と興味津々に聞いてくるお母さんに少し居心地の悪さを感じた。親にそういう話をするのはとてもじゃないけど気まずいし気が進まない。好きな人…というか、憧れってわけじゃないけど、大好きな人だったらジョージ先輩だけど。尊敬する先輩って言ったら双子だし、パーシー先輩もなんだかんだいろいろ教えてくれるし、ロンは大切な友達だ。1人1人をこういう人だよ、と説明している途中、お母さんは嬉しそうに笑った。

「たくさん友達ができたのね」
「うん。あのね、この人がジョージ先輩と」
「あら、双子なの?」
「そう!かっこよくない?多分こっちがジョージ先輩!」

もちろん勘である。写真の中のジョージ先輩は一定の動きを繰り返しているけれど、それでも動いている姿を見れるのは幸せだった。そもそもマグル界の制止している写真であったとしてもたぶん私はとても嬉しいんだろうけど。そんな話をお母さんにしていたからだろうか。ジョージ先輩も、もちろんほかのみんなも。どうしようもないくらいに恋しくなった。ああ、ずっと会ってない。日本とイギリスじゃ遠すぎる。簡単に会いに行けない。会いに、行きたいのに。ジョージ先輩に会いたい。みんなに会いたい。

「なまえも送ってあげたら?写真」
「…でも、」
「動かない写真なんて、あっちじゃ珍しかったりするかもよ?」

そういわれて納得して渋々写真を同封した。ううん、私の写真なんているかなあ。しかも…ジョージ先輩に送るのは…うーん。写真を送ってきてくれたし、ここはフレッド先輩に送ろう。いらなかったら捨ててくださいって言おう。部屋から去っていこうとするお母さんに写真立てある?と問いかけると、にっこり笑って後で持ってくるわね、と言われた。飾ろう。部屋の、一番見やすいところに。ホグワーツに行く前は日本の学校にいて、宿題などを必死にやった机の上には花束がある。ダンブルドア先生がくれた花だ。おばあちゃんに頼んで、枯れないように魔法をかけてもらった。ちなみに私も教えてもらった。おばあちゃんにダンブルドア先生の話をしたら懐かしがってたし、花束をもらった私に、よかったね、と心から喜んでくれた。今、私の部屋の中で花瓶に活けられた枯れない花が一番目につくところに、一番目立つように飾ってある。それほどあの出来事は、私にとってとてもうれしい事だったのだ。ちなみに、双子からもらった恐竜のぬいぐるみもその隣に置いてある。からかい半分だったとは思うけど、私にとってはこれもすごく大切な宝物だ。

「…あ」

そんな花束を視界の端に収めて、いよいよジョージ先輩にもらった手紙を開いた。フレッド先輩とそっくりな字で、日常の事が書いてあった。ロンは相変わらずだとか、妹がいるんだ、とか。兄弟の話とか、お母さんとお父さんの話とか。先輩らしい文章で書かれていて、何気ない事ばかりだけどとてもうれしくなった。それに、最後の文に。新学期に会えるのを楽しみにしてるなんて書かれているものだから、私の心の中が一瞬にして晴れ渡った。ジョージ先輩に会いたいなあ。クリスマスにもらってから毎日欠かさずつけているブレスレッドを触って、思わず口元を緩ませた。私は私が思っているよりもずっとずっとジョージ先輩のことが好きらしい。考えただけでこんなにも幸せになれるし、会いたくもなって、切なくもなるのだ。会いたい、ジョージ先輩。もちろん、みんなにも。
絶対に汚れたり失くしたりしないように、今の短時間で何度も読み返したその手紙をきれいに引き出しの中に入れる。そうしていればお母さんが写真立てをもってきてくれて、フレッド先輩にもらった動くそれを収め、花束の隣に飾った。
ホグワーツに入ってできたたくさんの思い出。次に帰ってくるときはもっと増えてるといいなあ。



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -