「ロン、ハーマイオニー!」

翌朝自然に目が覚めて、なんとなく寮を出たら歩いていた二人を見つけてはじかれたように駆け寄った。二人は私を見て何故かとてもうれしそうに手を振ってくれた。近づいてみると、二人(特にロン)はなぜか傷だらけで、心配しすぎたせいで胃痛を起こしていた痛みが再発した。大丈夫、と焦りながら声をかける私を見て、一瞬きょとん、とした表情を見せた二人は嬉しそうに笑った。笑い事じゃない!夜寮を出て行って帰ってきたら傷だらけって…絶対、何か危ないことをしたんだ。それに、ハリーがいない。いろいろ想像してしまった、また胃が重くなった。

「落ち着いてなまえ。みんな無事よ。心配してくれてありがとう」
「そうだよ。僕もこの通り、元気さ!」

それを聞いてほっと息をつく。最悪の事態を一瞬でも想像してしまったことを心底申し訳なく思いながら、ロンの手を包帯越しに撫でた。それでも、ロンは怪我をして帰ってきた。頭にも包帯が巻かれている。痛そう…私に魔法の知識があって治す呪文を知っていれば、今すぐにだって治してあげられるのに。友達がこんなにボロボロになって帰ってくるなんて初めての出来事で、無事とわかっていても安心しきれない気持ちになった。

「あの…なまえ、離してくれないかな…えっと」
「え?あ、ごめん!」

ずっと手を握っていたらしく慌てて離すとロンは少しだけ赤い顔をしていた。つられて私まで気まずくなってしまって、気を紛らわす様に口を開いた。

「ネビルがね、ずっと真っ青な顔してるの。私はもういいから、ネビルのところに行ってあげて」
「そうだった。ネビルには申し訳ない事をしたわ」
「仕方がないよ。僕、謝ってくる」

ハーマイオニーが私は後で行くわ、という言葉を去っていくロンの背中に投げた。行かなくていいのかな、と思っていると、ハーマイオニーが私の手を握った。

「なまえ、何も言わなくてごめんなさい。あなたが足手まといだから連れて行かなかったわけじゃないの」

申し訳なさそうに話し出すハーマイオニーの話を聞く。ところどころ汚れていて、大変な思いをしたのかな、と察することができた。ハーマイオニーの話によると、ハリーは目を覚まさないらしい。何があったのかを聞くと、一部始終を話してくれた。スネイプ先生は悪い人ではなかったこと。一人50点も減点された理由。入ってはいけない部屋に入って、賢者の石というものをクィレル先生から守ったこと。驚く話ばかりだったけど、クィレル先生が悪い人だたという事に驚いた。

「なまえを連れて行かなかったのは、なまえが自分に自信を持てていないように見えたからなの」
「え…」
「私は本を読んだわ。ホグワーツに来る前からずっと勉強していたし、知識には自信があったの」
「ハーマイオニー…」
「でも…その、なまえを守り切れる自信がなかったの。きっとなまえだって、自信を持てばすごい魔法使いになれるのに」

言おうとしてることはわかる。決して私を貶したりしているわけではない。何かに対峙したり窮地に立った時、私は自分は何もできないままかもしれない。それを危惧してくれていたのだ。私が最初からハーマイオニーやロンや、ハリーみたいに自信や勇気を持っていれば、みんなは私を連れて行ってくれたのかもしれない。

「私も謝りたい。自分は仲間外れだって思ったことがある、自分が悪いのに」
「なまえは悪くないわ」
「でもね、ジョージ先輩がいろいろ言ってくれたからね、前よりも魔法が使える自信もあるよ」

テストのために必死に勉強したし、と付け加えると、ハーマイオニーはおかしそうに笑った。私の安否を気遣ってくれていたのが嬉しかった。ホグワーツに来た時点で、魔法界についての知識がゼロだったのだ。大切な友達だから心配だったの、と言ってくれるハーマイオニーを見て、うれしくて心の奥底からじわじわと溢れてくる何かを感じた。

「ねえハーマイオニー、ネビルにかけたの…石になる魔法?」
「そうよ。正しくは全身金縛りになるの」
「今度、教えてくれる?あと治す方法も。私じゃ治せなくて」

いいわよ、ってはにかむハーマイオニーは相変わらず可愛かった。ありがとうと返せば、ハーマイオニーが嬉しそうに抱き付いてきたので私も抱き返した。何があったのかを聞いたらとても過酷で創造すらできなかったことだけど、三人が無事で本当によかった。ハーマイオニーとの友情も深まったように思えてなんだか嬉しかった。

「私もネビルに謝ってくるわ。ハリーの目が覚めたら、一緒にお見舞いに行きましょ」

そういってハーマイオニーは寮の中に入って行った。振り返ると、太ったレディがにっこりと笑っていた。見られていたらしい。寮の前で話していたのだから当然だ。騒がしくしてすみません、と謝ると、いいわよ、といつもの通り少しだけふてぶてしく返事をした。それと同時にふとドアが開いて、寮から誰かが出てきた。その姿を見て、一気に嬉しくなった。

「ジョージ先輩!」
「よくわかったな!おはようなまえ」

あ、本当にジョージ先輩だった。双子を見ると自然にジョージ先輩の名前を呼んでしまうのはもはや癖だ。おはようございます、と返すと、ジョージ先輩はにっこり笑って頭を撫でてくれた。ちょっとびっくりしたけど、突然どうしたんだろう、と考えていると、私の心を知ってか知らずか、先輩が口を開いた。

「よかったな!」

何について言っているのか一瞬わからなかったけど、続けておくからロンが出てきたのを見て納得した。この前マルフォイ君にいろいろ言われたとき、ジョージ先輩がたくさん慰めてくれてから心の中にあった蟠りはなくなっていたのだけれど、それでもずっとジョージ先輩が気にかけてくれていたのかと思うと嬉しくて自然と笑みがこぼれた。ありがとうございますって、ジョージ先輩には何度言っても足りない気がした。

――そして一週間後、目覚めたハリーのもとへロンとハーマイオニーと一緒になら入ることを許されて、ついて行ったら。ドラゴンの話をしていたおかげで気づいたんだというハリーが、ありがとうと笑ってくれたのでまた嬉くなった。
私、ホグワーツに来てよかった。そう思えるようになった自分が嬉しかった。



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