とても大変だった。
あの後、ジョージ先輩とフレッド先輩が、廊下を通りかかったフィルチさんに例の鼻くそ爆弾を投げつけて、あんぐりと口を開けて信じられない気持ちで見ていた私を巻き込んで逃げて、全力で走って大広間だ。夕食が並んでいて、おいしそうだ!と目を輝かせるふたりが行ってしまったのを、嵐のようだと感じながら、息を整えて近くにいた同級生の子の傍に座った。リー先輩も一緒になってやってたけど、笑ってみてただけだ。二人の悪戯をガッツリ目の当たりにしたのは初めてだけど、リー先輩はいつもああやってみてるのかと尊敬すらした。私なんてハラハラして気が気じゃなかったのに。いつも通り夕飯を食べて寮に戻ると、夕食を共にしなかった三人がそこにいた。やけにそわそわしている。どうしたんだろう、と思って、誰も寄り付かない三人が座っているソファへ近付いた。

「ねえ、三人とも大丈夫?」
「なまえ…さっきはごめんなさい」
「ううんいいよ、あとできくから」

深刻な表情を浮かべたり不安そうにしたり、その割にはそわそわしていたり。ハリーも含め揃いも揃ってどうしたのだろうか。テストが終わったのだから、もっと嬉しそうにはっちゃければいいのに。ジョージ先輩たちがあんなに騒いでいたから、思い出して思わず比較してしまう。というか、テストが終わっても終わってなくてもこんな三人を見るのは初めてだった。

「ねえなまえ、これから僕たちがすることは秘密にしておいてほしいんだ」
「いいけど…何かするの?」
「うん。お願い。そうだなまえ、透明マントから足が出てないか見てみてよ」
「え…」

あのマントか、と思わず言葉を止めた。確かにあのマントはとてもすごかったけど、最初にハリーが浮いてる生首状態になったのをみて正直ちょっとトラウマだ。バサッとマントを取り出してかぶろうとする三人を見ていると、ふと後ろから声がした。

「どこに行くつもりだい?」
「ネビル…何でもないよ」
「外に出てはいけないよ。またグリフィンドールの点が減っちゃう。僕戦うぞ!」

突然臨戦態勢に入ったネビルに驚く。え、ハリー達外に行くつもりだったの?状況がよく分かっていなくて頭の中で整理していたのに、ハーマイオニーがネビルに向かって杖を向け、謎の呪文を述べた。するとネビルはぴたりと動きを止めて、そのままの体制で床に倒れてしまった。え!?と思わず声を上げた。シーッ!と三人に迫られたので、倒れたネビルを心配しながら三人に尋ねた。

「外行くの?ていうか、ネビル…え、何しに…」
「なまえ、お願い。時間がないの!必ず話すわ、だから今は見逃して」
「見逃すも何も…」

危険なこと、だろうか。このまえ受けた罰則の話を少しだけ聞いたけど、禁じられた森に入るなんて話を聞いて、とても心配になった。何がいるとか何が起こるとかは知らないけど、生徒が入ってはいけなくてその名前だ。自然と恐怖心を抱いていたので、ネビルも含め、何もなくてよかったと話を聞いた後は心底安心したものだ。もしかして、今回も似たように危険を伴うのなら。止めたい。そんな危ない事、先生に任せればいいのに。減点された理由も、もしかしたら今回のことが関係あるのかもしれない。行ってほしくない。私がついて行って…三人を守れる自信なんて全然ない。むしろ、足手まといになってしまう。考えに考えて、しばらく続いていた沈黙を自ら破った。

「…わかった。でも、危ないことはしないでね」
「ありがとうなまえ。…あのね、聞いて。私…」
「時間がない。急ごう」

ありがとう、とロンもハリーも私にお礼を述べて、マントに隠れて部屋を出て行った。ちなみに足は出ていなかった。この時間に部屋を出ること自体罰則をくらってしまう対象なのに、そこまでのリスクを背負ってもやりたい何かがあるのだ。帰ってきたら言ってくれるって言ったし、それにハーマイオニーの言おうとした話の続きも気になる。帰りを待とう。床に転がってしまったネビルの腕に触れると、体温はあるしちゃんと心臓も動いていた。当たり前だけど、ハーマイオニーが危ない呪文をかけるわけがないから大丈夫だ。でもだからと言ってこのままネビルを放っておくというのにはどうも気が進まなくて、どうしようと頭をひねる。考えに考えた末、だめもとでネビルに杖を向けて、もどれと声をかけてみるけど、無意味だったらしい。まあできると思っていたわけではないけれど、もしかしたらという気持ちもあったのだ。帰ってきたらハーマイオニーにこれについて聞こう。かける方法と説く方法をちゃんと教えてもらおう。

「…あれ、なまえ?」
「ネビル?お、起きたの!?大丈夫?」
「うん…何が起こったんだ…?」

一瞬私の適当な魔法(らしきもの)で元に戻ったのかと思ったが、時差があったしどう考えても違うだろうと思い返して起きようとしたネビルを支えた。呆然としていたが、突然ハッとしてハリーたちは!?と慌てだしたネビルに一瞬とても焦った。

「あの…ネビル、ハリーたちは行っちゃったけど、きっと理由があって」

顔を真っ青にしたネビルに、見逃してしまったのは自分だからととても申し訳ない気持ちになった。戻って寝よう、というと、ネビルは顔色の悪いままコクリと頷いて談話室を後にした。さて、私も戻ろうかと、今夜は隣のベッドが空である自室に戻った。寝ようと入ったものの、寝れない夜になりそうだ。いつもは隣にハーマイオニーがいるのにいないから一人だし、それに、三人が心配だ。自然と心細さも出てくる。思った通りなかなか寝付けなくて、その日の眠りは今までで一番浅かった。



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