――そして、クリスマスがやってきた。日本で行うクリスマスと、こっちで行うクリスマスではレベルが全く違った。なんていうか、何もかもが豪華で大胆だ。朝起きたら、ハリーとロンが楽しそうにプレゼントを開けていた。ハリーはなぜか信じられないといったような表情を浮かべていたが、それを構っている暇はなかった。だって、私にも届いていたのだ。私には三つ。一つはハーマイオニーだ。わあ、っと嬉しくなって開けた。ポストカードと、手袋が入っていた。たぶん、普通の…マグル、が使っているものだと思う。もう一つはおばあちゃんとおじいちゃんから。羽ペンだ。おじいちゃんはマグルって言ってたから、おばあちゃんが選んだのかな。大切に使おう。三つめはお父さんとお母さんからだった。重い。なんだろうこれ。そう思って頑張って動かして開けてみると…

「なんだ、それ?」
「……」

大きな袋の中でざらざらと流れる感触。これには覚えがある。

「米…」
「え?」
「どう炊けと…」

もしかして、私が以前送った手紙のことを考慮してくれたのだろうか。確かに、脂っこかったり肉料理が多かったりこっちの食生活にはなれないままで、そろそろ本気で米が食べたいと思っていたころだったが。こんなプレゼントをもらうのは初めてだよ、お父さんお母さん…。

「すごい…それ透明マントだ…」

米に気を取られていると、ふとロンが言った言葉に顔を上げた。ハリーを見てみると、ハリーの顔だけが浮いていて…

「ギャーー!!」
「わ!びっくりした」
「か、顔が浮いて…!?」
「手紙があるよ、マントから落ちたよ!」

ホラーだった。普通に怖かった。びっくりして思わず座り込んだ。ロンやハリーは何故そこまで驚かないのか。差出人不明の手紙を読んで頭をひねっていたり話をはずませていたが、そんなことよりも早くマントを外してほしかった。

「なんだなんだ?悲鳴が聞こえたぞ!」
「メリークリスマス!」
「おい、見ろよ!ハリーもウィーズリー家のセーターを持ってるぜ!」

そんな声とともに入ってきたのは双子だった。おそろいのセーターを着て肩を組んでいる姿を見て、かわいすぎてきゅんとした。ちなみにハリーはもうあのマントを脱いでいて、後ろに隠していた。脱いでくれてよかった…。

「なまえもメリークリスマス!プレゼントはもらった?」
「メリークリスマス!えっと…ジョージ先輩?」
「正解!まあセーターを着ているからわかりやすいな」

FとGは二人の頭文字だろう。Gと編まれたセーターを着て話しかけてきたジョージ先輩に声をかけられて、うれしくてスチャッと起立した。クリスマス…朝一で先輩にあえて、話せるなんて幸せだ。先輩の笑顔に心を癒されながら、話をつづけた。

「先輩、あの…お願いがあるんですけど」
「ん?いいけど、珍しいな」
「その、今度、火を出す魔法教えてほしくて」
「そんなこと?お安い御用だ」

簡単だからな、という先輩は、そんなことを言う私に疑問を抱いたらしい。もちろん、米を炊くためである。何合あるのかな、これ。どうりで重いはずだと思った。ジョージ先輩と話しているうちにフレッド先輩も話に入ってきて、メリークリスマス!と嬉しそうに言った。

「ところでなまえ、俺たちからもプレゼントだ」
「い…悪戯道具ですか」
「そんなことないさ」

とかいいつつ、にやにやとしている二人を見て信じるわけがなかった。もらったプレゼントをなるべく遠ざけて恐る恐る開けると、そこには…

「恐竜のぬいぐるみ…」
「ぴったりのプレゼントだろ?ダイナソー姫」

ウインクを飛ばしてくるのはFのセーターを着た先輩だ。こ、この…まだ引きずっていたのか。私はここにきて何回恥ずかしい思いをすればいいのだろう。真っ赤になっているであろう私の顔を見て、けらけらと笑う二人ももう見るのが何回目かわからない。

「あと、これは俺から」
「え…」
「メリークリスマス、なまえ」

フレッド先輩がやってきたパーシー先輩のところに行ってしまってから、ジョージ先輩がポケットからこっそりと何かを出してきた。それを私には見せずに、手を出して、と私の手を取った。ナチュラルにそんなことをするから、ドキッとして背筋が自然に伸びた。

「ただのブレスレットだけど、お守り。気休めだけどね」
「ジョ、ジョージ先輩…」
「魔法が使えるようになるようにね!あと、もう危ないことはするなよ」

トロールのことを言っているのだろうか。起きた出来事に呆然としすぎて、ありがとうございます、と絞りとったような声で言った私を見て、先輩がおかしそうに笑った。それにはっとして、そうだ、魔法が使えたことにお礼を言わなければ、と顔を上げたときには、ジョージ先輩は私から離れて、フレッド先輩とパーシー先輩をからかっていた。しまった、またタイミングを逃した。この前はフレッド先輩と間違えて言いそこなったし。また今度タイミングを見つけてお礼を言わなければ。

「…ジョージ先輩が、くれた」

そう思いながら、先輩が触れた手に視線を戻す。先輩がくれたそれはとてもシンプルなものだった。だけど、この世で何よりも素敵なブレスレッドに見えた。嬉しくて、自分でも顔がにやにやとゆるむのが分かった。先輩が、私にくれた。嬉しくてうれしくてどうしようもなかった。ドキドキと心臓が音を立てているのがわかる。それにそっと触って、胸元に持って行ってまた嬉しくなった。一生大切にしようと思った。
その後のパーティも何もかも楽しくて、うれしくて、その年のクリスマスは私にとって最高の思い出になった。



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