楽しかったクリスマスが終わって、冬休みも終わり、日常が戻ってきた。

最近、ダイナソーの君やらダイナソー姫やら呼ばれることはめっきり無くなった。もちろん、ジョージ先輩たちからだ。フレッド先輩の方がしつこくダイナソーと呼んできた気がするけど、それも談話室の時に初めて名前を呼ばれた日から無くなったような気がする。なんだか、自分がだんだん双子のファンという位置づけに安定してきたような気がする。クリスマスに二人からもらった恐竜のぬいぐるみもなんだかんだとても大切にしている。自分のベッドの上でよごれないようにして飾ってあるし。ジョージ先輩にもらったブレスレットだって、いわずもがな、である。そんなことを考えていたら目の前にその人を見つけて、考えて動くよりも先に体が動いて、駆け寄りながらその人の名前を呼んだ。

「あ、ジョージ先輩!おはようございます!」
「おはよう、なまえ」
「僕もいるんだけど?」
「フレッド先輩もおはようございます!」

名前を呼んで振り向いた方がジョージ先輩だったらしい。まだ見分けはつかないけど、おまけかよ、とわざと落ち込んで様な表情をしているフレッド先輩を見て、あははと声をあげて笑った。
魔法が使えるようになってからなんだか自分にも自信が出てきて、自分で言うのもアレだけど、少し明るい性格になったような気がする。ハーマイオニーやハリーやロンのほかにも友達ができた。最初は本当につらくて、一刻も早く退学したいと考えていた。郵便が来る時間にお母さんとお父さん、そしておばあちゃんやおじいちゃんからの手紙があって一瞬泣きそうになった。その返事に帰りたいと書くのは、せっかく私を学校に行かせてくれている両親に申し訳なくて、だからと言って学校生活が楽しいと書くのも変な意地が張ってできなくて。結局「まだ魔法には慣れないです。そろそろ米が食べたいです」とだけ書いて手紙を送った記憶も、過去の思い出となった(本当に米を送ってきたのには驚いたけど)。それだけ私の学校生活は充実してきていたのだ。

「ジョージ先輩!ずっと言いたかったんですけど、この前羽が浮いたんです!飛行訓練で箒も飛びました。ほかの魔法も、ちょっとだけ使えるようになりました!」
「ほんとか、やったな!」
「この前いってたやつか」
「ジョージ先輩のおかげです!ありがとうございます!」

たぶんは私はこれ以上ないくらい満弁の笑みで、始終にやにやしていたんだと思う。突然一気に話し始めた私に若干たじろいだけど、すぐに笑顔を返してくれた。きゅーん、心臓が締め付けられるようだ。前にフレッド先輩に(間違えて)報告して、クリスマスの時もプレゼントに浮かれすぎて、ジョージ先輩にお礼を言う機会を逃してばかりだった。でも私が魔法を使えるようになったきっかけはジョージ先輩だから、絶対にお礼を言いたかったのだ。

「ジョージ先輩がいてよかった」

口元が緩むのを抑えきれずに、少し恥ずかしい気持ちになりながら、わずかに火照った顔を隠すようにうつむきながらそういった。
初めてダイアゴン横丁であった時のことを感謝していた。学校に入ってジョージ先輩がいたことも、ジョージ先輩と仲良くなれたことだって、ジョージ先輩のことを気にし始めたのだって、あのきっかけが無ければ、もしかしたらなかったかもしれない。フレッド先輩と二人でダイナソーってからかってくることも、もしかしたら魔法をずっと使えないままだったかもしれない。こうやって、心からホグワーツでの生活を楽しいと思い始めることもなかったかもしれない。大げさかもしれないが、私が変われたのは、ジョージ先輩のおかげだと思ってる。実際に何もしなくても、一度会った出来事がずっと心の中で私を支えてくれているのだ。トロールの時だって、先輩の言葉が頭に浮かんだ。

「じゃあ、また!」

一気に恥ずかしくなって、二人にそう言い残して大広間へ向かった。ハーマイオニーたちが待ってる。朝からジョージ先輩やフレッド先輩に会えたことをラッキーだと思いながら、小走りで足を進めた。時折、自分の手にはめているブレスレットを見て浮かれたりしながら。

大広間につくと、いつもとは違った意味で中がざわざわしていることに気付く。どうしたんだろう。グリフィンドールの寮机で三人とネビルの四人ぼっちで座って、なぜか注目を集めている四人に気後れしながらも近寄った。そしたらなぜか私も注目される。こうなると思った…。ここに来てから注目を浴びるのは何回目だろうか。

「おはよう、みんな…なんかこっち見てるけどどうしたの?」
「…なまえは、グリフィンドールの点数を見た?」
「え…」

見た…といえば見たかもしれない。というか、視界に入っていたかもしれないけど、そこを通った時にジョージ先輩たちを見つけて全然意識してなかった。見てないけど、というのになぜか少し恥ずかしくなった。

「どうかしたの?」
「君も見てみればわかるよ」

ハリーがそう言った時の様子が落ち込んでいるように見えたので、どうしていいかわからずにとりあえず肩をポンポンと軽くたたいた。ハーマイオニーも目に見えて落ち込んでいるから、よくわからなかったけど、ハリーにしたのと同じようにぽんぽんと肩をたたいた。



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