スペシャル・カラー




 テンテンはよく笑う。気が強く振る舞うこともあるがそれは牽制したい相手へ向けたものであって本来の彼女は面倒見がよく明るいので人当たりも良い。

「今度の休み?うん、大丈夫!行こう行こう。また連絡するから」

 そんな彼女と街を歩くと時折、彼女の友人や知人に呼び止められる。今回は女友達。少し話し込んで次の休みに一緒に甘味を食べに行くことになったようだ。またね、と手を上げるテンテン。再び肩を並べてに歩き出す。

「ネジ待たせてごめん」
「いや」
「あ、あそこのお店でいっか。休憩しよ」

今度の任務に向けて忍具の買い出しに出掛けるという色気のない1日だが、一応男女として付き合っているので世間一般から言わせるとこれもデート、というやつなのだろうか。…その辺りの感覚はよく分からない。

とりあえず一通りお目当の物は手に入ったので休憩しようと店を探していたところでテンテンの友人に引き止められていたところだった俺達は丁度近くにあった茶屋に入ることにした。

暖簾を潜れば流石に昼と夕方の間の時間という具合に空いていて店員が好きな席に座って良いと言うのでテンテンの意向により壁側の席に着いた。同時に店員が注文を聞きに来る。

「ネジ何にする?」
「俺は飲み物だけあれば良い」
「じゃあ私も…」
「食べたいんだろ?食べたら良い」
「うっ…」

じゃあ、このゴマ団子ひとつ。
珍しくおずおずと店員に注文するテンテン。何故か少し恥ずかしそうな姿が面白くて少し笑うとテンテンがそれに気付き頬を膨らませる。

「な、何よ〜」
「いや、遠慮するなんて珍しいこともあるんだなと思って」
「いや、遠慮じゃなくて、その…」
「?」
「…この前ネジとお茶してるところを知り合いに見られてて、それでネジは落ち着いてお茶啜ってるけどそれに対してよくバクバク食べられるよね、って笑われて」

そんなこと今までは気にしたことなかったけど、一応仮にも恋人同士だしもう少し振る舞いに気を付けた方がいいかなとか思ったの!そう言っている自分が自分で、らしくない、と思っているようで「あー」なんて頭を抱えている。

「気にしなくて良いだろ。今更だな」
「そ、そうかな…そう思う?」
「ああ」
「だ、だよねー!?ていうかネジが少食なのがいけないのよ!」
「おいおい、俺のせいか」

そんな軽口を叩いている内に飲み物と団子が運ばれて来た。それを待ってましたと言わんばかりに美味そうに頬張るテンテン。その幸せそうな表情が結構好きだということはまた余計な反感を買いそうなので口にはしないでおこう。そう思いつつ出てきた茶をズ、と飲む。

「あ、そうだ。忘れない内に…」

3つ串に刺さっていた団子を2つ食べ終えたテンテンが不意に何かを思いついたらように声を出すと鞄から手帳と青いペンを取り出した。何をするのかと思えばスケジュールを記入するらしい。

「××と甘味巡り…っと」
「…それ、最近つけ始めたのか?」
「あー、このスケジュール帳?そうそう。今までは家のカレンダーにつけてたんだけど可愛いのがあったから買っちゃったの」

見て見てと言われるがままにスケジュール帳を覗き込めば任務やら人と会うやら、結構みっちりと青い文字で書き込まれた予定で埋まっていた。先程約束していた友人との予定も早速書き込まれている。
任務は別としてよくもまあここまで予定が入るものだ。ちなみに今日の枠は空欄。今日の忍具の買い出しが決まったのは昨日の夜急遽だったからだろう。

「あ、そうだ!ネジ、今度のこの日なんだけど…」
「ああ」
「私急遽オフになってね、もし良かったら会わない?」
「ああ…大丈夫だと思う」
「良かった!実は親戚のおばさんに大量の野菜貰っちゃってひとりじゃ食べきれなくてさあ」

うちでご飯食べよう、と楽しそうに笑う彼女に断る理由はないので今一度こくりと頷いて見せると満足そうに青いペンで指定した枠にスケジュールを…書こうとしたテンテンだったが何故かピタリと動きを止めた。
?やはり何か都合が悪かったのだろうか。そう思っていると「違った」と主語なく何かを否定し、これまた何故か手にしていた青いペンをテーブルへ置き、鞄を漁り始めた。何をしているのか…と思っているとやがて鞄からテンテンはピンク色のペンを取り出した。

「ネジとの予定はこれで書くことにしたんだった」

そう言ってテンテンは一面青色だったページに、ピンク色で「ネジとご飯」という文字を残した。

 テンテンは人当たりが良く、面倒見もよく、明るい。それ故に友人も少なくない。そんな彼女の世界で大袈裟かもしれないが、どうやら俺はもっと自惚れても良い程には特別な存在らしい。こんな単純でちっぽけなことかもしれないがそれが、スケジュール帳にピンク色で書かれた自分の名前が嬉しいと、そんなことを思ってしまうのだった。

 その日、喜ぶだろうと適当にケーキを持参して彼女の家に行くと、そのケーキの箱を見たテンテンがぽかんと驚いて口を開き、そして同じ店で買ったと思われる「お誕生日おめでとう」と書かれたプレートの乗ったケーキを俺に見せた。「空気読んでよ!サプライズだったのに!あんた自分の誕生日忘れてるでしょ!」と近くにあったティッシュ箱で叩かれたわけだが。まあ野菜を大量に貰ったのは本当らしく、それをふんだんに使った手料理と、そしてやたらと多いケーキを2人で笑いながら食べたので一件落着というところだろう。

2016703



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