短い髪




長期任務を終え、久しぶりに里に帰ってみると思わぬ光景と出会した。

「テンテン…か?」
「あ、ネジ」

長期任務だったんだっけ?おかえり。といつもと同じ笑顔を向けてきた彼女はまさしくテンテン本人だ。が、その髪にいつものお団子頭はない。長かったであろう髪が、耳の少し下辺りからばっさりとなくなっている。つまり、ショートカットになっている。

「どうしたんだ…それ」
「え?…あぁ、髪?」

苦笑いを浮かべるテンテンを見て、少なくとも自ら短くしたわけではないと察する。

「ちょっと任務でね」

とちっちゃって。そう静かに言った表情はどこか哀愁に満ちている。

「そうか…」
「ま、でもイメチェンみたいなもんね」

カラカラと明るく笑ってはいるが自嘲気味な苦笑いに見えるのは俺だけか。女がいくら任
務だからとはいえ髪を不本意に切り落とすなんて少なくとも幸せではないだろう。そのくらいは俺にだって分かるが、しかしこればっかりはどうしてやることもできない。

「…そうだな。少し変わった」
「…ネジでも女の子の髪型の変化とか分かるのね」
「…それだけバッサリいってれば誰だって気付く」
「リーは気付くどころか、私ってことに気付かなかったわよ」
「あぁ…あいつなら有り得るな」
「有り得ないわよ。まったく…」

いつもの物言いでそうぼやいて頬を膨らます。何故だかその仕草さえも新鮮に見えて、自分自身ではあまり気に入ってないというか長かった髪が惜しいと思っているんだろうが、これはこれでいいなんて柄にもないことを思った。

「ネジ…?」

無意識に手が目の前の彼女の髪に触れていた。呼びかけられてはっと気付く。が、いやがっているわけでもなく俺の行動を不思議そうに見ている。なんだか俺も手を引く気にはならなくて、そのまま短くなった髪を掬う。

「いいんじゃないか。色々と楽になるだろ」

それにまた伸ばせばいい。髪はまた伸びるのだ。任務はいつでも命懸けなのだ。そう。髪でよかった。命があって良かった。そう考える自分は案外ポジティブ思考なのではないかなんてどうでもいいことを思ったが、それは普段から前向きな思考をしているこいつに感化されているからなのだと勝手にこいつのせいにした。
他人の髪が惜しいと思ったり、命があってよかったなんて考える自分は自分でも随分と変わったものだと思わず苦笑いがひとつ。

「い、いつまで髪触ってるのよネジ!」
「あ…?あぁ悪い」
「いきなり褒めたり髪触ったり…意味わかんない…」

怒らせたか?確かにいきなり女の髪を触るのは無神経だったかもしれない。少しそんなことを考え反省しかけた時、テンテンの顔が真っ赤なことに気付いた。困ったような表情、赤い頬。こいつのこんな表情はじめて見た気がする。

「テンテン」
「何よ」
「熱でもあるのか?」
「うるさい!」

あぁたまにはこんなふうに自分の変化を感じたり、自分らしくない自分をまた発見したり、こいつのくノ一とはまた別な顔を見たりするのも悪くないかもしれない。

20110119



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