それも悪くないと思った




「あーあ。残念」

放課後、部活も休みでなんとなく直帰する気にもなれなかったため学校近くの公園のベンチに座り読書をしているとそんな俺を発見したいつもの二人がいつの間にか周りに集合していた。リーは近くのブランコに、テンテンはブランコ回りの柵に座り各々今日あったことなどを話す。いつものように口数の多い二人が次々に話をして俺はほとんどリアクションを返すばかりだ。そんなふうにいつもの会話を繰り広げていると珍しくプツリと会話が途切れたときテンテンの、はあ、というため息となにやら“残念”だという声が聞こえたた。

「何が残念なんですか?テンテン」

もちろん長年一緒にいる仲ではあるが“残念”だけでは真意までは読み取れない。リーが不思議そうにそう訊ねると、んん。とつまらなそうに口を開く。

「隣のクラスの彼、彼女ができたらしいのよ」
「隣のクラスの彼?」
「この前言ってたバスケ部のイケメン君!」
「あぁ…確かテンテンが可愛いと言っていた例の」
「そう。なのにうちのクラスの子と先週から付き合い始めたとかいっててさあ」
「…」
「テンテンは彼のことが好きなんですか?」
「え?全然?」
「…」
「…」

まったく意地を張っている様子もなくアッサリと言い切るその様子に俺もリーも言葉を失う。じゃあ何をそんなに残念がることがあるのか。こいつはいつもそうだ。可愛いだの格好がいいだのとすぐに目を輝かせて、しかしいつもそれで終わり。その先には結び付かない。大体にして男に可愛いという表現はどうなんだ。

「テンテンは好きな人がいないんですか?」
「いっぱいいるわよ」
「いや…好みとかではなくて、そう、僕がサクラさんを愛しているのと同じような相手はいないんですか?」

びしっと親指を自分に向けて立てながらリーが今まで一度も聞いたことがなかった真意をついた。すると先程までのあっけらかんとした表情とはうって変わり、急に難しそうな顔。そして言いづらそうに、というかどこか投げやり、いや恥ずかしそうに口を開いた。

「好きな人なんてできたことない」

ふてくされ気味に視線を斜め下に向けそう言ったテンテンに、俺とリーは顔を見合わせる。まさか、そうとは思わなかった。確かに今まで誰かが可愛いだの格好がいいだのという話は何万回と聞いたが誰か特定の相手を好きになったという話は一度も聞かなかったがそれは俺達に言わないだけで他の女友達にはそういう話をしているのだろうと思っていた。まさか今まで一度も経験がないとは。意外とばかりに二人で何も言えずにいると照れくさそうにテンテンが続きを話す。

「だ、だって好きとかよく分かんないし!それにそんなこと言うならネジだってそんな人いないじゃない!私のときばっかりそんな驚くことないでしょ!」

いや、いつもミーハーというかなんというかテンテンだからこそ驚くべきことだ。こいつが顔を赤くしながら言うんだ本当に事実なんだろう。もうなにからなにまで意外すぎてリーと二人でそんなテンテンを凝視してしまった。

「ああもう!なんでこんなことあんた達にしなきゃいけないのよ!聞いてきたくせに返事もしないで馬鹿みたいに口開けちゃって!」
「あ、すいませんついびっくりして…」
「悪かったわねお子様で!」

はっとしてリーが謝ると赤い頬を膨らませていよいよテンテンが拗ねた。これは機嫌を損ねたぞ。どうするんだとリーに無言で視線を送ると慌ててフォロー開始。

「全く悪いことではありませんよテンテン!これからいくらでも好きな人が見つかりますよ!」
「ふん!好きな子がいるからって先輩面しちゃって」
「先輩…なんか照れますね」
「照れなくていい!」

折角の嫌味もリーには通用せずますます眉間に皺を寄せるテンテン。はあ、とため息をつきながら意外にもこんな少女のような一面もあるのだなと考えたが口にしたらその瞬間鞄が顔面に飛んでくることが容易に想定できるのでその代わりにこの場が無事収拾できるような台詞を考えた。

「まったくそもそも女の子にそんな質問するなんてデリカシーないわよリー!そんなんだとサクラにも嫌われるんだから」
「そんなあ…」
「まあ、テンテンの言う通りだな」
「ネジまで!酷いですよ二人共」
「テンテン。配慮が足りなかった詫びにリーがそこのコンビニで中華まんでも奢るそうだが」

それで手を打て。そう言うと、え?と突然のフリに目を丸くするリー。そんなリーを他所目に流し、どうする?と外を向くテンテンの団子頭と未だに赤い頬に問いかければ数秒置いた後くるりとこちらを振り向いて、まあそれで許してあげる。と立ち上がった。

「ネジ!酷いですよ」
「こうでもしなきゃお前下手に何か言った瞬間鞄投げつけられてるぞ」
「う…しかし何故僕が」
「珍しいものを見れた見物料だと思えばいいだろう」

早足で先に歩いていくテンテンの後ろでリーにそんなことを言うと、ううんと少し考えながら前を行くその背中を見て、何か納得したように頷いた。
「それもそうですね」
そうリーが言った瞬間、前からテンテンの「私スペシャルリッチピザまんね!」とコンビニの中華まんの中でも一番高いものの名前があがる。落ちたリーの肩に手を置き、俺も半分出す。と語った。リーのサクラへのアタックもまあ相変わらずな様だし当分はこうして男二人、女一人でこうして騒ぐ日々が続くんだろう。

20120210



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