お呼び出しと幼馴染
放課後、帰ろうとすると靴箱に「屋上に来てくだいさい」という手紙が入っていた。差出人が書いていないため疑問に思いながらも外に向かおうとしていた足を屋上に向ける。
「来てくれたんだ」
屋上の重たいドアを開けるとそこには五人の男子。どうやら私を呼び出したのはこの人達のようだ。
「何か用?」
何の用件か見当がつかないのでそう聞くと男の子達は一様に薔薇の花束を差し出して頭を90度まで下げた。そして
「好きです!付き合ってください!」
どうしよう…まさかこんな、告白されるなんて…
「ごめん、私…凄く動揺してて…」
「いいんだ。ゆっくり考えてほしい」
だけど最後には俺を選んでほしい。と真剣な目を向けられる。
ど、どうしようー!
「…っていう展開だったら大歓迎なのに」
それなのにこれはどういうことだ。まるで真逆。帰ろうとすると靴箱に「屋上に来てください」という手紙が入っていた。そこまでは同じだ。そこまでは良い。がしかし、向かった屋上にいたのは薔薇を持った男の子ではなくてガンッガンに殺気を出してこっちを睨みつけてくる女子の集団だった。確かこの子達は…と思うのも束の間、さっそく「アンタさあ、日向君のなんなの」
…始まった。
「…で、何だこの状態は」
「アンタのせいよ。アンタの」
幼馴染とは厄介なもので名前呼びしているからだとかやたら仲がいいからだとか良く話してるからだとか、そんなんでいちいちイチャモンつけられるこっちの身に少しはなってほしい。今日だってこうして呼び出されたと思ったら殴りかかってくるもんだから手首を捻り上げたら今度は彼女達に雇われたらしい男子数人が乱入。まあそいつらが薔薇の花束を持っているわけもなくあろうことか一斉に殴りかかってくるじゃないか。女の子になにすんのよ。ありえない。
「五回目」
「何がだ」
「私がアンタと仲良しなのが気にくわないんだって言われて呼び出された回数」
「…」
そして同時に返り討ちにしてやった回数。
まったく…。そう言いながら足元に倒れている男子生徒の山…の近くにある鞄を踏みつけ溜め息をつくとそれに続けてネジも溜め息をついた。
「それにしたって男数人相手にお前…」
「男子だけじゃないわよ。女子だって取っ組みかかってきたんだから」
「なら余計だろ」
殴りかかってきた男子(と女子)を逆にボッコボコにのしてやり一息ついているとガチャと開いたドアからネジが出てきた。まったくこいつのせいで毎回酷い目に遭うんだから。
「ボコボコにしたって言ったって手加減はしたし怪我もしてないでしょ。ほら」
「そういう問題じゃないだろう…」
「力加減くらい分かってるわよ。女子には手上げてないし。長い爪で掴みかかってくるから手首つかんで睨みつけたら甲高い声出して泣きながら逃げてった」
逃げるなら最初から突っかかってくるなってのよね。
そう言いながら男子の鞄から出てきたメロンパンの袋をバリっと開けてばくばくと食べているとネジが私の手からメロンパンを奪ってそのまま倒れている男共の鞄にパンを戻した。
「あ、何すんのよ」
「お前のじゃないだろ」
「こいつらのしたのは私なんだしいいじゃない。戦利品ってことで」
「お前な…あまり暴れるな」
行くぞ。と手を引かれて屋上を出る。あーあ、せっかくのメロンパンが…。引きずられるがまま屋上からの階段を下る。
「もう。せっかくのメロンパンが…」
「………テンテン」
「なに?」
「……すまない」
「なにが?」
「俺のせいで毎回お前に迷惑をかけているんだろう?」
珍しい。ネジが自分に非があるわけじゃないのに謝るなんて。
まったく。
「今更なに言ってるのよ」
「…しかし」
「こんなのが怖くてあんたと幼馴染なんかやってられないわよ」
そう言ってネジの手から離れネジを追い越す。どうやらさっきの乱闘で鼻の頭を擦り剥いたらしい。少し痛むその傷口を親指でくいっと拭い数段下からネジを見上げると困ったような呆れたような顔。ちょっと可愛い。
「そうか」
あ、笑った。
20120401