バレンタイン




「バレンタインだからといってどうということでもないよね実際」
「…」
「チョコ作って渡すだけでしょ?ないないやらないやらない」
「…」
「別に作れないとかじゃなくてただ単にやる気がないっていうか。そう、あんまり興味ないのよね」
「…今日の家庭科の調理実習で誰かが失敗してボヤ騒ぎになったらしいな」
「…へえ」
「…お前だろ」
「…」

違う。あれは私のせいじゃなくてうまくチョコが固まらなかっただけで別に失敗というかそれはただ単に

「…お菓子なんて市販が一番よ」
「身も蓋もないな…」

はあ。と「やっぱりお前だったか」とでも言いたげなため息をこぼしたネジ。その手元には不思議とチョコのひとつも見当たらない。おかしいな。ネジだったらチョコのひとつやふたつ貰っててもおかしくないのに手元にも足元にも見当たらない。

「チョコは?貰わなかったの?」
「…甘いものは苦手だと断った」
「あー…」

なるほど。どうりでね。ネジがひとつも貰えないわけないと思った。

「そういうお前は誰にも渡さなかったのか」
「…渡せたと思うわけ?」

あのボヤ騒ぎを知ってて。と言うと、威張るな…と呆れられた。料理は苦手なんだから仕方ないじゃない。ちょっとお菓子作りとか向いてないだけよ。うん。きっと練習すれば出来るんだと思うんだけどね。

「…でも、一応完成品を先生に見せないと調理実習の成績つかないから黒コゲだったけどなんとか形にしてはみた」

まあ食べられたもんじゃないけど。そう言いながら鞄の中に入ったコゲくさい袋を覗き込んだ。私だってもう少しセンスがあればなあ。

「はあ…」
「何でネジが溜め息つくのよ」
「…お前のことだからどうせリーと俺の分でも作ろうとしたんだろ」
「…自意識過剰」

まあ、そうだけど。
そう呟くと少しの沈黙。

「貸せ」
「え?」
「これから部活だろ?俺はこれから用事会うからリーにもテンテンからだと渡しておく」

貸せ。と出された手を見つめる。
“リーにも”ということはネジ自身もうけとるということだろうか。ネジがラッピングされた袋なんて持って歩いたら噂になるじゃない。あーあ私知らなーい。

「言っとくけど、あんた達二人だけにあげるわけじゃないわよ」
「そうなのか」
「もちろん。ガイ先生のもある」

だから三個。よろしくとコゲくさい匂いのする袋を手渡すと珍しく笑いながらその綺麗な手でネジは三つとも受け取った。
「了解した」もったいないなぁネジったら。本当ならもっと出来のよくて美味しいチョコ貰えたのによりによって鞄の中に入っているのはコゲくさい仕上がりになっているやつだなんて。まあでもきっと来年までには少し勉強して今年よりはいいものを渡してやろう。きっと驚かせてやる。「ホワイトデー期待してるから!」去っていく背中にそう投げ掛けると、お前な…と渋い顔で見られた。さて、今からお菓子作りの本でも買いに行こうかな。

20120214



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