不器用もお互い様




最近、これでもか嫌なことが続いた。任務でミスしたりお気に入りの忍具が紛失してしまったり修行しても全然うまくいかなかったり同期で卒業したくのいちと手合わせしたらコテンパンにされたり…これが所謂、不調。スランプというやつなのだろうか。悔しいのと情けないのとが同時にのし掛かって肩がずんと重い。リーもガイ先生もドンマイドンマイとその肩を叩いてくれるけどその度に重量を感じてしまい今は仲間の優しささえも素直に受け取れない。どうしようもない。しかしこんな格好悪い気持ちを誰かに言えるわけもなく、みんなで修行した後に里をランニングしてくると飛び出して行ったリーグとガイ先生を遠目に見ながらひとり演習場の真ん中でため息をついて座り込んだ。

「…」
「…」

…訂正。ひとりじゃなかった。ネジがまだこの場にいて先程から私なんかには目もくれずひとり柔拳の修行をしている。しかしこれは完全にネジはひとりの世界だしどうせ私のことなど見えていないだろうからノーカウントだ。脇目も振らずに修行に打ち込むネジは天才天才だと言われてるけど修行は怠らず勤勉で私達と同じで努力もしていて…落ち込んでるヒマがあったら私も頑張らなきゃって分かってるのに。膝に乗せた腕に頭を寝かせてネジをぼうっと見続けるとそうしているうちに、何故かジワジワと眉間と鼻の奥の辺りからツンとした熱がやってきてどんどん目に涙の膜が張ってきてそれは程なくぽろりと液体になって頬を伝い腕に落ちた。その瞬間、あ、もう駄目だと思うと同時。何か堰が切れたように一気に気持ちと声が溢れてきた。

「う、わああああん」

えんえんとまるで言うことをきかない子供のようにわんわん泣き始める。なんてみっともない。これ後で思い出して恥ずかしくなって居た堪れなくなるんだろうななんて頭のどこかではそんな冷静なことを考えながらもれでも止まらない。次から次へと涙が溢れてきて声が出てしまい肩を上下させて嗚咽を繰り返しているとそんな私の視界の端にぼんやりとネジの姿が見えた。さっきまでこっちには目もくれず修行に打ち込んでいたネジが今はピタリとその全ての動きを止めて目を丸くしこちらを固まったように見ている。ネジのあんな顔、珍しい。まあこの状況でまだ修行し続けたらそれはこれで私が驚いちゃうけど。
そんなネジもおかまいなく涙を流して泣き続けるとそのうちネジがこちらに向かってくるのを感じた。そしてピタリと私の横で止まると

「…おい」

その声色はどこか困っているようで物言いは可愛くないのに冷たさを不思議と感じない。しかしその声掛けに応じようとするも如何せん言葉がうまく出てこないので、ひっくひっくと下手に呼吸するだけに留まる。放っておいて良いのに。いつもみたいに私なんかに構わず冷静な顔してどっか行ってくれていいのに。そう思うもネジは依然として私の横を動かずその姿をチラリと見ると立っているのに飽きたのか私と反対に顔を向けストンと座り込んだ。人ふたり分くらいの距離感。

…もしここにいたのがリーだったらどうだったかな。きっとリーの前だと格好つけたくなっちゃうからこんな風には泣けなかったかもしれない。ネジだから、私のことなんて眼中にもない、他人に興味のなさそうなネジだったから気兼ねなく、私もネジを気にせず泣けたのかもしれない。でも私の考えは間違っていたようだ。ネジの広い瞳には案外ちゃんと私も映っていたらしい。修行するにもわざわざ私が座り込んでる近くでやらなくても良かったのに。今日は忍具の調達に行くとか言ってたのに。自意識過剰かもしれないが考えれば考える程ネジの分かりづらい気遣いが見えてくるような気がしていつの間にか私の涙は止まっていた。そよそよと風が髪を撫でていく。

「…ネジ」
「何だ」
「ネジって案外、女の子の慰め方分からないんだね」
「ふざけるな」
「…ねえ」
「…」
「ねえってば」
「何だ」
「今の、内緒ね」

“内緒も何もお前が勝手に騒いでただけだろ”と、俺は関係ない。なんて私と視線を合わそうとしないネジは私が思っていたよりも不器用で可愛いらしいのかもしれない。そんなチームメイトの素顔に触れ私はいつの間にか笑っていて、少しスッキリと雲も晴れた気分だった。

「ありがとネジ」

ネジはまた関係ないと言わんばかりに私から顔を背けたのだけれど。

2013126



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