心配性はお互い様




任務で怪我をした。ちょっとした戦闘になった際だ。ネジの背後に敵の武器攻撃が向かっているのが視界の端で見えた。ネジの視野の広さだとか回転という防御があるだとかそういうことは百も承知の筈なのに咄嗟に体が動いてしまってネジを庇ったのだ。咄嗟のことで武器で応戦し弾き返す暇がなく身を呈すことになった私の肩に相手の攻撃が深く刺さって。その忍具には毒が塗られていたらしくその後なんとか敵を蹴散らし任務を遂行し終えることが出来たから良いものの私の後先考えない独断な行動によりリーとガイ先生に大きな迷惑がかかることになった。

「ごめんなさい…」

幸い毒は大したものではなく頭がぼうっとして発熱したときのようにふらつく程度だったので恥ずかしながらガイ先生に背負ってもらい里まで帰った。リーもガイ先生も笑いながら気にするなと励ましてくれて、でもネジは目を合わせてくれない。そりゃあそうだ。ネジからすれば自分で防げる攻撃だったのにそれに割って入ってきて勝手に怪我して足を引っ張って…あれで任務失敗なんてなっていたらシャレにならないんだし、それに自分の実力を疑われたって思うよね。

「おかしいなあ…」

今までずっと一緒にやっててどんな攻撃に対応出来るのかどこでフォローが必要なのかくらい熟知していた筈なのに。ネジにもう私に背中を預けて戦えないって言われたらどうしよう。それは、嫌だ。

私を病院に運ぶガイ先生の代わりにネジが任務報告に行くことになって私は毒抜きの薬を投与され数十分安静にした後特に異常もないということで帰路についた。朝早く出た里はすっかり夕暮れ。ふう、と沈む心を落ち着かせ家まで帰る。しんと暗い部屋に明かりを灯せばお腹が空いてきた。



「はあ」

ネジはきっと怒ってる。いやそれより呆れてるかもしれない。もしかしたら私と一緒のチームが嫌になったかも。ネジは上忍で私は中忍のまま。実力の差は歴然でそんな私にお節介やかれて庇われるなんて嫌だっただろうな。…あーもう駄目駄目。気分転換にご飯でも買いに行こう。

外に出るとひんやりとした夜風が頬を撫でた。ぼんやりと浮かび上がってくる家庭の明かりをぼんやり眺めながら最寄りの店まで歩く。そんなときだ。ふとネジの家が見えた。…迷惑かけたこと謝ろうかな。そう思い足を向ける。どくどくとする心臓を抑えながらもその家の戸を叩く。

「はい」

暫くしてネジの声。「ネジ、私」と返事をするとギッと音を立てて戸が開いた。そしてネジが出てきた…のだが。姿を現したネジが着ていた服が、思い切り前後逆である。ラベルが前にきていて明らかに前と後ろ逆。……もしかして、これまでネジと一緒にいた私の勘からしてこれは

「…ぷっ」
「?」
「あ、あっははは…!」
「!?」

怒るでも呆れるでもなくこれは心配してくれていたのかもしれない。ネジがぼけっとするなんて珍しい。心配かけちゃっな。突然笑い出した私にネジははてなマークを頭の上に沢山浮かべて小首を傾げる。

「ごめんごめん」
「お前…体はもう良いのか」
「うん、おかげさまで」
「…そうか」
「それよりネジ、服が後ろ前だよ」

私の指摘に「!?」となり慌てて自分の姿を近くにあった鏡に映して三秒程固まった。そんなネジにまた声を上げて笑う。
“そうか”と言ったネジの声が、どこかいつもより優しくて安心した風に感じて。無性に泣きたくなった。私、ネジやあの二人とチームで良かったよ。

「これからご飯買いに行こうと思って。ネジもどう?」
「ああ」

先ほどまで視線を落として歩いてた夜風の道を今度は二人で並んで進む。明日にはまた任務だ。だけど今日はこの時間だけはこの人に委ねて温かいこの空間に浸らせてもらうことにしよう。そうすれば明日からはまたあなたの後ろで頑張れるから。だからこれからも背中を預けてほしい。

「明日も晴れると良いね」

隣でネジが小さく微笑んだ。綺麗な星空の夜だった。

20131103




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