少女漫画




※現パロ


「少女漫画って面白いよねー」

絶対に同意が返ってくる訳がないと分かっているのにポツリとそんなことを口にしながら手元にある少女漫画のページをペラリと捲ると案の定、ソファーに腰をかけていたネジが怪訝そうな顔をこちらに向けた。

「同意を求められても困るぞ」
「読んだことないの?」
「あるわけないだろ?」
「確かにネジが少女漫画読んでたら気持ち悪い…」

キラキラした絵柄の少女漫画を片手にしているネジを想像してぶふっと笑いを溢すとネジが「想像するな」と苦情を口にして私の持っていた漫画をひょいと取り上げた。あ、と声を漏らす前にネジはその漫画をパラパラと捲り始めて顰めっ面でそれをまじまじと読み始めた。ネジの後ろに回って覗き込めば、適当に開いた真ん中辺りのページで。丁度ヒロインがクラスのイケメンに壁ドンで迫られる胸キュンシーンだった。

「…理解出来ない」
「壁ドンよ壁ドン。今人気でしょ」
「…壁際に追い込まれて嬉しいのか」
「イケメンにされたらね」
「身も蓋もないな」

そう言いつつパラパラとページを捲るものだからヒョコっと好奇心が芽を出した。そうだ。忘れがちだけど折角ここにイケメンがいるんだから有効活用しなきゃね。
思い付きをそのままに、ネジの肩を「ねえねえ」とつつく。

「何だ?」
「じゃんけんで私が勝ったら、この台詞、私に言ってみてよ」
「…は」
「はい、出さなきゃ負けよーじゃんけん…」

これ、と適当に指差したのはイケメンがヒロインに壁ドンしながら言っている、「君のことが好きだ。俺のものになれよ…」という優しく問いかけつつも強引さも垣間見せるという女子が大好きなギャップというものを絶妙に混じえた台詞で。強制的にじゃんけんに参加させる。「くだらない」と無視してしまえば良いものを「いきなり」と言いつつ反射なのか何なのか、律儀に“ポン”の掛け声に合わせて拳を出してしまう辺り本当に変なとこ真面目だなと笑ってしまう。しかし真面目なネジ君、残念でした。

「はい、私の勝ちー」
「…」

ネジが出したのはグー、私はパー。どう考えても私の完全勝利だ。ヒラヒラと勝利のパーをひらつかせると無表情に顔を反らそうとするネジ。逃がさないと言わんばかりにネジの前に回り込んで、さあ、と促せば目を細められた。

「…やるわけないだろ?」
「じゃんけんで負けたでしょ。約束は守らなきゃねネジ君」
「約束も何もお前が勝手に始めたんだと思ったが」
「出した時点で成立です。ほら、早く」

くっ…と暫く口を一文字に結んでだんまりを決め込んだネジだったけれど私が一度言い出したら聞かないことも重々承知らしい。そのうち諦めた様に、ふう、と深めの溜息を漏らして、すっと立ち上がったかと思うと私の腕を掴み数歩歩いて壁際へ。そして緩い動きで私を壁で挟み込み、重い口を開いた。

「き、君のことが…」
「ぶふっ」
「…」
「あはっ、ごめんごめん、続けて続けて」

覚えてろよ、と睨まれたが面白くて仕方ない。今すぐ笑い出しそうになる気持ちを抑えて下腹部に力を入れると漸くネジが最後まで台詞を続けた。

「君のことが、好き…だ…俺のものに、なれ…」
「…よ」
「…よ」

変な汗をかいているネジだったがこれは拍手ものだ。よく出来ました、とパチパチ拍手を送ればガクリと脱力したネジがソファに戻って「疲れた…」と頭を抑えた。

「でもさ、“俺のものになれ”って嫌じゃない?束縛されてるみたいで」
「お前が言えって言ったんだろ…?」
「いや、実際の話」
「実際こんなこと言う奴がいたらお目にかかりたいものだな」
「目の前にいるじゃない」
「お前がやらせたんだろ」
「でもさ、やっぱりネジっぽくないよね」
「言いたい放題だな」

もうこの話は終わりだ、と漫画をポイと返されてまたそれを開く。本の中ではめくるめく青春の物語がキラキラ輝いて進んでいる。けれども、まあ

「ネジはさ、そのままが一番だよね」

だよ、とか優しい物言いのネジなんて気持ち悪いし、人のこと自分のものにしたい、みたいな思考のネジも嫌だ。ネジは“どうでもいいです”みたいな素振りなのに実は広い視野を持ってて相手をちゃんと見られるっていうスタイルだからこそ良いんだ。そう結論を出してひとりでウンウンと頷く。すると黙っていたネジはテーブルにあった湯呑みを手に取り中途半端に入った中身のお茶をくるくると無駄に回しながら言ったのだった。

「口説き文句の上手い人間もいたもんだ」

あ、胸キュンしたの?

20141015


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