30 days
彼の肌は熱い。そこまで体温が変わるわけではないのに不思議だなあと思う。
「なに考えてんの」
「え、熱いなあって」
見上げると、色素の薄い瞳をかち合う。染めてパーマをあてたらしい髪と似た色だが、こちらは元からそうらしい。いつもは眼鏡越しにその色を眺めているけれど、いまは何も隔てるものがない。
「かずくんってすごくあったかい。こういうときはすごく感じるよ」
抱き合うのは好き。彼の肌から伝わる熱が好き。注がれる真剣な視線が好き。彼の頬に手のひらを滑らせる。汗で少し湿り、手に肌が吸い付く。
手をふわふわの髪に移すと、明るい茶色が動きに合わせて揺れた。そのまま撫でると気持ちいいのか、目が細められた。かわいいなと思う。
「空さんって、こういうときいつもそんなん考えてんの?」
「そんなことないけど、なんで?」
聞くと、唇が少し尖った。
「僕はいつも考え事する余裕なんてないのに」
ずるい、なんて言われるので笑いを堪えるのが大変だった。
「もう、ちょっと思っただけだよ。拗ねないで」
「拗ねてない。……こういうとこが子どもよなあ」
加減して、でも勢いよく彼が落ちてくる。触れ合う面積が増え、心地いい湿度を感じる。
「わたし、子どもとか思ったことないよ?」
「うそ」
「ほんと。かずくん、かっこいいもん。わたしのこと大切にしてくれてうれしい」
広い背中に腕を回すと、強く抱き締められる。
「ちゃんと伝わってた?」
「もちろん」
「もっと伝える」
「え」
彼が上半身を起こすと視線が絡まる。瞳の奥に熱情を感じて体が痺れた。
「空、好き」
重ねられた唇は、やっぱりとても熱い。