30 days
「あのね、やっぱりマンネリってカップルの敵じゃん?」
「いつもながら本当に脈絡がないな」
向かい合わせで朝ご飯を食べている最中、そういえばと切り出された。
「一緒に住んでるとさ、こう、改めてデートとかしないし」
指を一本立てて力説してくれているが、その唇にはパンのかけらがついている。
「だからね、今日は、あえて! 待ち合わせから始めようと思います!」
「へえ」
「興味持って!」
ハムエッグは完璧な塩加減だ。食パンですくって口に入れながら、これでも一応話は聞いている。
「三十分後に駅前!」
「俺はいいけど、支度間に合うの?」
「……やっぱり一時間後に駅前!」
「いいけど、どこ行くの」
「わからない! とりあえず待ち合わせがしたいの!」
ここまでテンションが上がり切っていると何を言っても無駄だ。楽しそうすぎる。鬱陶しいくらいだ。そこまで考えて手のひらを合わせる。
「はあ、わかった。ごちそうさま」
「ごちそうさま!」
「じゃ、俺は先に出るわ」
「え、早くない?」
食器をさげながら言うと、高い声が追いかけてきた。
「待ち合わせなんでしょ。服とかカッコとか、後で見たほうがいいんじゃないの」
水に浸けてから顔を見ると、今までになくおとなしかった。ついでに真っ赤だった。
「で、デートっぽい……!」
「デートなんでしょ」
「いけめん……」
「どうも」
こうなるとしばらく動かないだろうから、支度をしにリビングを出た。