30 days


 今日は彼女の誕生日。なのだけど、カレンダーでは何の変哲もない火曜日。だから彼女は普段通り仕事へ行ったし、僕も普段通り大学へ行った。とはいえ火曜の講義は午前中までだったから、先に彼女の家へ帰ることができた。
 誕生日に向けて準備は万端。
 いつもならちょっと手が出ない高めの食材を買い込んだ。勝手知ったる台所を使わせてもらい、食事の準備を始める。
 牛肉の赤ワイン煮と付け合わせの温野菜、カクテルサラダに、サツマイモと野菜を使ったスープ。数週間前から計画していたメニューを作る。もちろんケーキは人気店のものを予約しておき、いまは冷蔵庫の中だ。
 料理が無事にできあがったとき、タイミングよく玄関の扉が開いた。

「あ、やっぱり開いてる!」
「おかえり、空」
「ただいまー!」

 ひょこっと覗いた小さな頭。僕を見つけてぱあっと笑うので、たまらない気持ちになる。

「いい匂いがする」
「ごはん作っといた。誕生日メニュー」
「やったー!」

 両手を突き上げてから抱き着いてくる。かわいいな、とその頭を撫でて、手洗いうがいを促した。

「今日は来てくれてるかなって思ったけど、ごはんまで作ってくれてるなんて!」
「せっかくの誕生日やからね。どっか外、おいしいとこ連れてってあげたかったんやけどなあ」
「学生さんだもんね」

 自由に使えるお金が多くないということを空はよくわかってくれている。もう少し余裕があればとも思うけれど、今日はその中でもかなり工夫できたほうだ。

「あと、プレゼントもあるから」
「え、楽しみ!」

 いつか左手の薬指にも贈りたいものがあるのだが、ひとまずは彼女に似合いそうなネックレス。喜ぶ顔が楽しみだ。




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