30 days


 ごはんをつくるというのは、手間がかかる。
 献立は? 栄養は偏っていない? 色合いは?
 こんなことを一度に考えられていたお母さんはやっぱりすごいんだなあ、なんて。
 休みの日の台所。隣には利一さんがいて、慣れた手つきでひき肉を丸めていた。

「玉ねぎ、炒めなくても大丈夫なんですか?」
「すぐ焼くときは問題ないんですよ。食感も残っておいしいですし」

 家では炒めていたなと思い出して聞いてみると、穏やかな回答が返ってきた。利一さんは料理上手だ。私もがんばってはみているけれど、やっぱり段違いだなあと思う。

「沙紀さん、油とってください」
「はい!」

 火にかけて、フライパンがあったまるのを待つ。頃合いを見て油を投入し、そっとタネを入れていく。

「おいしい匂いがする!」
「ふふ。今日は粉ふき芋もつけますよ」
「やった!」

 台所には立つものの、休日は彼に任せきりだ。ただ横に立って会話をするだけ。邪魔をしていると言ってもいい。

「お皿、青と白、どっちにしましょう」
「今日は白ですかね」

 残った肉汁でソースまで作っている。調味料は完璧に目分量だけれど、味見をさせてもらうとものすごくおいしかった。利一さんは天才だ。

「利一さん、本当に料理上手ですね」
「え? 私、沙紀さんと会うまでまったくしませんでしたよ」
「じゃあ器用なんですね! すっごくおいしいですもん」
「沙紀さんの好みを研究してますからね」

 こういうことをさらっと言うのだから敵わない。ありがとうございます、と言おうと顔を上げたら、唇が重なった。ちゅ、と甘い音。

「はい焼けた。持って行ってくださいな」
「うう、利一さんてば反則!」




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