30 days
「ぐっもーにん結依さん! 今日もイケメンだねっ」
あ、面倒くさそうな顔した。美形の冷たい視線ってなかなか堪えるものがあるんだけど、うちの結依さんは結局構ってくれるいいツンデレだと思ってる。
「さて! 今日はですね、おいしいと評判の食パンが手に入りまして、」
「ちょっと待て」
すらりと長い人差し指で唇をふさがれる。うるさいとは言われても黙らされたことはない。今日がその限界だったのか。でも今日はまだ控えめなほうなんだけど。
「お前、熱あるだろ」
「へ」
「なんでいつもと同じテンションなの。分かり辛い」
はあ、とため息をひとつ。確かに起きたときから少し頭が重いなーとは思ってた。
「薬飲んで、今日は寝てて。明日も下がらなかったら病院ね」
「でも明日は仕事が、」
「俺の言うことが聞けないの」
この人とんだ俺様なんですけど!
笑顔で反論を封じて、強引に寝室に逆戻り。
「さっき起きたばっかだし、眠くないです」
「そこを寝るの。病人なんだから」
「うう」
やだなあ。と思っていたら、結依も布団に入ってきた。
「眠くなるまで一緒にいてあげるよ」
「え、どうしたの結依、槍が降るからやめて」
「人が優しくしてやってるんだから素直に寝てくれる?」
いつもより棘が少ない。病気になるのもいいもんだなと思っていたら、早く寝ろと怒られた。
嗅ぎ慣れた結依のにおいに安心して、すぐ眠気がやってきた。なんだか悔しい。眠りに落ちる前、抱き寄せてくれたような気がするけど、さすがにそれは天変地異が起こっちゃうよね。