30 days


「うおおおおおおおお!」

 寝坊した! と飛び起きて、飛び起きたときから違和感はあったんだ。
 視線が、なんか高い。あとなんか体が重い。
 そのあと鏡を見て、冒頭に戻って、とりあえず私は走った。リビングへ。

「ゆゆゆ結依! あのあのあの」
「日本語話せる?」
「話してるわ! って、あれ?」

 今日も温度が低いその声の主を見ると、なんか、なんかなんか。

「ちっちゃい」

 テーブルでお茶を飲む結依がちっちゃい。背が縮んだというよりもこれは。

「女の子になってるよ!?」
「見たらわかること、もう一度教えてくれてありがとう」

 しれっとしてるけど、何なのこれ!
 結依は元からとても整った顔をしてる。でもいまは、どことなく柔らかくなったような気がする。とんでもない美人だ。とんでもない。
 起きて異変に気づいてから着替えたのか、部屋着のスウェットを着ている。体の線は出にくいけど、わかってしまう。

「胸があるよ!?」
「新菜よりあるかもね」
「えぐるようなこと言うのやめて!」

 全然動揺してないんだけど、え、なんでしてないの? なんでいまそんな悲しいこと言ったの?

「別にいいんじゃない? 性別が変わるくらい、そんな大きな問題じゃないし」
「大きいよ! めちゃくちゃ大きな問題だよ!」

 私の訴えに、結依はなぜかにっこり笑った。

「男でも女でも新菜は新菜でしょ。俺はどっちでもいい。新菜が好きだよ」

 きれいな顔が迫ってくる。そのまま唇が重なって――



「ってところで起きたの」
「へえ」



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