30 days


 葛くんは、たぶん同級生の中では落ち着いているほうなんだと思う。大人びているし。

「そうでもないやろ」
「そうかなあ? 四つ離れてるとは思えないくらいしっかりしてるよ」
「空さんも落ち着いてるやん」
「そりゃ、だって社会人だし」

 私はいま社会人二年目。葛くんは無事大学に合格してもう三年目になった。私たちが出会ってから三年。あっという間だなあ、なんて時の速さに驚く。

「わかってはいたけど、ほんまに追いつかれへん」
「追いつきたかったの?」
「というか、うーん、なんやろ」

 隣同士に座っていた葛くんが首を傾げる。と、急に唇を奪われる。

「空が僕の年やったときに追いつきたいんかな」
「そんなの、もう追い抜いてるよ」
「まだまだ」

 体重をかけられて、そのままソファに横になった。ちゅ、ちゅ、と唇が降ってきて、くすぐったい気持ちになる。

「大人の男にならんと、空によそ見されたら嫌やもん」
「私、浮気なんてしないよ?」
「それは知っとるけど、めちゃめちゃかっこよくて仕事もできるような男とか、出てきたら」

 冗談だとはわかっているけど、なんとなく不安そうにも見える。上半身を起こして、困り顔を両手で挟んだ。

「出てきても、何も変わらないよ。私はかずくんをいちばん好き。こんなに好きなんだから、そんなの考えないでよね」

 唇で彼の唇に軽く触れる。すごく驚いた顔が面白くて、笑ってしまう。

「もー、空さんほんまに好き……」
「私も好きだよ」

 かわいいな、と思ったことは、拗ねるだろうから黙っておこう。


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