友達以上恋人未満

「いってきます!」

お菓子の入ったポシェット、ふわりと舞う白い生地。
響は元気よくかけて行った。
目的地は”友達”の家。
そばにいると気持ちよくて、どきどきして、まるでおいしいお菓子を食べたときのように幸せになる。
そんな場所が響にできた。

「たーつおー」

チャイムとともに名を呼べば扉の内側から犬の鳴き声。
床を踏みしめる足音とともに扉が開く。

「いらっしゃい、響」
「たつお!」

開いた扉の向こう側に見えた笑顔に響は笑みを浮かべて抱きついた。
ふわっと香るバニラエッセンス。
響は顔をあげた。

「たつお、お菓子作ってた?」
「うん、響の好きなイチゴのケーキ。小太郎も楽しみにしてるんだぞ?」
「わーい、ケーキさん大好きー」

響は嬉しげにはしゃぐ。
間近で友達の顔を見つめれば優しげに細められた瞳が自分を見ていたことに気付く。
ほのかに赤くなった頬を見て、いちごさんだねと笑う姿に響はうつむいてしまう。
友達のはずなのに、友達に思えない。
響はその感情を知るには少々幼すぎた。

「響?」
「たつおー」

ぎゅうと甘えるように抱きつけばどうしたの?と問いかけられる。
なんでもないのとつぶやき響は目を閉じた。



達央は知っていた。
響にとって自分はまだ”友達”であることを。
ケーキを食べて笑顔を浮かべる響を見つめながら達央は微笑んだ。
それでもいいと思ってしまうのは、きっと自分が彼のことをどうしようもなく好きだから。

「たつお、ケーキおいしかったよ。たつおのケーキはいつでもおいしいね」
「響のこと想って作ってるからね」
「…僕のこと…」
「好きな人のこと想って作る料理はすごくおいしくなるんだよ。知ってた?」

そっと唇についたクリームをなめとる。
柔らかな頬は赤く染まり、響は恥ずかしそうにうつむいてしまう。
一つ一つの仕草に新しさを発見し、達央は微笑んだ。

「…大好きだよ、響」
「…僕も」

まだまだ”友達”としての好きでもかまわない。
いついつまでも、彼の隣を占領できるなら。

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