縁側の日常

うとうとと、船をこいでいるのは泣く子も恐れる吸血鬼。
しかし彼はそんなことを気にしていないのかすやすやと縁側に腰掛けて眠っていた。

「まったくー…カインってば自分の顔立ちのよさわかってるのかな」

ぽつりとつぶやく彼は吸血鬼の恋人?
そっと頬をなでれば吸血鬼は軽くうめいて目を開く。

「おはよう、カイン」
「恋識…」

愛しく思う人の顔を寝起きに見た彼は嬉しそうに微笑んだ。
そしてその艶めいた寝起きの声でさらに言葉を続ける。

「起きてすぐ恋識の顔見れるっていいね」

本人に悪気はない。
それでも彼にとってはかなりのダメージ。
胸をおさえてうずくまった彼を吸血鬼はおろおろしながらなでている。

「こ、恋識?どっか痛い?お医者さん呼ぶ?」
「お医者さんより、カイン…」

ぎゅうと吸血鬼を抱きしめた彼は幸せそうに微笑んだ。
どこか濃い血の香りのする彼は、自分と似ているようで少し落ちついた。

「カイン、大好き」
「う…」

吸血鬼は彼からの愛の言葉におろおろとする。
問いかけられると小さく囁いた。

「僕も」

小さな小さな声だったが、確かに彼の耳に届いた。
嬉しげに笑う彼に吸血鬼も微笑んだ。
日の光もニンニクも十字架も平気な吸血鬼の弱いところがあるとすればそれはきっと彼なのだろうか。

「それじゃ、カイン、とりあえず買いものに行こうか」
「買いもの…今日のご飯なに?」

彼よりもずっとずっと年上であろう青年はそれでも嬉しそうに問いかけた。
吸血鬼が何を好きかなんて知らない。
それでも、彼の作ってくれる料理がこの吸血鬼にとっては一番の食事だった。
手をつなぎ、二人は日の当たる縁側から街の中へと歩き出していった。





(恋識、縁側ってあったかいよ。一緒に寝よう?)
(明日休みだから一緒にね)

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