嫉妬の辛さは恋の甘さ



彼は意地悪なのは知ってる。
そりゃ付き合いだしてからまだ一年ほど。
でも、十分すぎる…
ついでにいえばモテすぎる。

「郁〜最近顔出してくれなかったわねぇ〜?」
「そうよ〜どうしてぇ?」

綺麗なお姉さん方に囲まれる郁を見つめ俺は何度目かわからないため息をついた。

「あぁ、悪いな…俺は用事が」

振り向いて俺を見る郁。
その目はふと柔らかくなった…気がする。
否、うっそりと細められた。

「あぁ、気にするな」

郁の腕が一人のお姉さんの腰に回り引き寄せられた。
いらっとする。
あの郁の腕は俺だけを抱くはずなのに。
表での殺しは禁止されているから、郁にまとわりつくお姉さんたちをきれない。
もやもやした黒い感情だけがたまって行く。

「郁…・」
「まぁ、今回は無理だな」

郁は笑って腕をはなした。
そして俺のほうにまっすぐ歩いてくると軽々と俺を引き寄せ抱き上げた。
ていうか、俺は子供みたいに抱き上げられるのは好きじゃない。

「…悪いが、こいつが怒るからな」

郁はいつものように低く笑うと俺を抱き上げたまま歩き出す。

「…いいのかよ」
「なにがだ?」
「あのおねーさんたち」
「あぁ、気にするな」

どうせ暇人だからな、と郁は告げた。
そういうことじゃない。
俺は胸のもやもやを郁に話せないまま首に腕を回した。

「なんだ、嫉妬か?」

郁は聡い。
ずるい。
嬉しそうに笑うんだから。

「・・・ま、それもまた俺を愛してるってことがよくわかるだろ?」

わかる。
郁は俺に唇を寄せた。
少しかさついた厚い唇。

「もっと教えてやるよ。俺を好きになるってのがどういうことなのか、な・・・」

意地悪く笑う郁は魅力的。
道のど真ん中で、俺たちは口付けを交わした。
意地悪な男は甘く俺にささやいた。



『どれだけ嫉妬しても、俺がお前以外を好きになることはない』

嫉妬の辛さは恋の甘さ

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