最初で最後の恋を君に

初めて恋に堕ちた人は異国の魔術師だった。
最後の恋人は哀しい魔術師で、僕の最高の旦那様。

最初で最後の恋を君に


昔々、あるところに科学力の栄えた王国がありました。
王国を統べるのは、巨万の富と権力を振り回す王様です。
その王様には二人の息子がおりました。
長男は次期国王として大事に育てられましたが、次男は牢獄に幽閉されています。
美しく豊かな金髪も薄汚れ、汚い布のような服しか与えられないにも関わらず、皇族たる気品を失ってはいませんでした。
牢越しからも移り変わる空を見つめ、鳥よ花よと愛でていました。
そんなある日、宮殿に見ず知らずの男が訪れたのです。
美しい横顔に彼は一目で恋に落ちました。
ところが、彼は魔術師だったのです。
魔術師は牢獄の彼を殺戮兵器に作り替えてしまいました。
死なない躰。
血に飢える躯。
彼は何千年も孤独に生きました。
その中で再び巡り会ったのは、初めて恋をした魔術師。
彼は憎しみの対象でしか無かった筈でしたが、再び恋をしてしまったのです。
夏林と名を呼ぶ優しい声音、時々憂いを帯びる瞳がどうしようもなく愛しいのでした。
「夏林、どうした?」
殺戮兵器は緩く首を振るとそっと魔術師の胸に頭を寄せる。
そこからは心臓の音など聞こえず静かでした。
魔術師は軽く息を吐けば、柔らかな殺戮兵器の髪に触れます。
蒼い髪が白い魔術師の手を流れる様は美しい造型のようでした。
くすぐったそうに体を捩る殺戮兵器を逃さぬように魔術師は、殺戮兵器を腕に閉じ込めてしまいます。
「銀サン……」
「夏林、私はお前を永久に愛そう」
魔術師の囁く言葉はまるで呪いのように殺戮兵器の耳を犯します。
うっとりと魔術師の顔を見上げると殺戮兵器も囁きました。
幼さの残る顔で声で魔術師の名を呼ぶのです。
「僕も、貴方を愛します……どんなに時が流れようとも……銀サン、貴方のことだけを」
それは何とも残酷で美しい光景でした。
互いに死ねない体を持つ人でなし。
そんな二人が廻り合い、互いに愛し合ったのです。
魔術師が愛しい殺戮兵器の顎に手を添えれば、殺戮兵器も目を閉じました。
二人の影が重なるそれは、二人の未来を暗示するようで。
二人の話はまだまだ続きます。
彼等の行く末を見届けることは出来ませんが、二人の幸せを願いおしまいといたしましょうか。
二人はきっと永久に幸せでありましょう。











おしまい。
(銀サン、今度は何処に行きましょう?)
(焦らずとも、時間はあるぞ?)
(これからの時間を総て銀サンとのものにしたいのです)

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