姫初め

今年も終わり。君は何をしているのかな。
俺は家賊と紅白を見ているだろうね。
来年が訪れる瞬間は、君と一緒に過ごしていたいけど。



姫初め



今年も残すところ後僅か。
家賊と見る、毎年恒例の紅白歌合戦。今年も白が勝って新年を迎えるのだろうか。
ざっと辺りを見回せば、大人組は酔いがまわっているのか、饒舌に自身の恋人の自慢話をしている。
学生組は炬燵に潜って眠り込んでいた。
幼い響も、初めは起きていると言い張ったが、今は春姫の膝の上で寝ている。
そんな響が可愛くて、少し羨ましい。
春姫も柔らかな笑みを浮かべ、響を愛でていた。
昔を思うと大分丸くなったように思う。
銀と和正は反りが合わないのか、よく揉めていた。
どうやら、まだ長々と恋人自慢をしているらしい二人。よく話題が尽きないよな。
俺はしみじみ熱燗を飲んでいた。
闇識もそろそろ眠いらしく、ミカナギにもたれている。
眠たげに目を擦っていた。
俺はちらりと恋人の顔を見る。
「…………」
すまし顔で酒を飲んでいた。
銀達の自慢話に参加する訳でもなく、静かに紅白歌合戦を見ている。
俺は少し悲しくなった。
確かに郁は人前でそういう話をする様な奴ではない。
それでも少しくらいは何かを言って欲しかった。
俺は振り払う様に酒を煽る。
急に煽った酒のせいなのか、睡魔に襲われた。
そのまま、身体を重量に従わせる。
うとうとと心地よく微睡み始めていた。
遠くに春姫の声が聞こえる。
「……ゅう、きゅ……く、ご……ん……」
なんなのかは判らない。
しかし、身体を引き起こされた。
何なのだと、思う間もなく口づけられる。
暫くすれば唇は離れていった。
「ッ……いくッ……」
文句の一つでも言ってやろうかと思っていると、耳を低く掠れた声が打つ。
「あけましておめでとう」
はっと時計を見れば丁度新年を知らせる鐘が鳴った。
「……あけましておめでとう」






fin.

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