スウィーツ男子s



「あー!俺のプリン!」
「ぐっ…え、これ梳識の?!」

彼が怒ったそもそもの原因は俺が、勝手に彼が楽しみにしていたプリンを食べてしまったことによる。
謝ったんだけど、なかなか許してくれない。
しかもそれどころか、口も聞いてくれなくなった。

「梳識、本当に悪かったって」
「………」
「新しいの買ってあげるから」
「……………」

この調子ではや一週間。
俺はもう仲直りするのは無理なんじゃないかと思い始めたときだった。
行きつけのお菓子屋さんでみた1つのプリン。
'ディ・ブレイク'
暁、という名にふさわしい真っ赤なプリン。
カスタードではなくトマトを使った珍しいプリンだという。
俺が食べたのもコレのはず。

「…すみません、このディ・ブレイクを1つ」
「お持ち帰りですか?」
「はい」
「ふふ、これが今日最後なんですよ」

梳識と仲直りするために、神様がくれた最後の1つ。
俺は保冷剤の入った箱を片手に家に急いだ。

「梳識!」

思いっきりリビングの扉を開けば梳識は一人でテレビを見ていた。
そっとそばにいきプリンの入った箱をおく。

「梳識、プリン見つけたよ…」

ようやく梳識が俺を見てくれた。
泣きそうな顔をしていた。

「梳識?」
「暁のばか!」

そう叫んだと思ったら抱きつかれていた。
プリンはすでにテーブルの上だったから無事だったけど、体勢を崩した俺はしこたま頭を打った。

「…暁と、暁とおんなじ名前だから…だから、このプリン食べたら、暁と1つになれるかもって…楽しみにしてたのに」
「俺の名前と…?」

'ディ・ブレイク'…意味は暁。
だからか…
俺は納得して抱き締めてやる。

「一緒に食べよう?もっと俺と1つになれるよ?」
「うん…」

あーん、とスプーンですくったプリンを梳識の口にいれてやれば、梳識が俺の口にプリンを運ぶ。
トマトを使ったプリンは、口の中でとろけていく。
そのうち俺は口にいれたプリンを梳識に口移しで食べさせていた。
舌の上で転がるプリンはすぐさま解けていく。

「ぁ…ん…」
「暁…おいしい…」

梳識はいつのまにかプリンをそっちのけで俺の服に手をいれていた。
口の中に溢れる甘味はいつの間にか、梳識がくれる快感の味に変わっていて…
一週間なにもしなかった分俺はしっかりと食べられた。

初恋は蜜の味?
いえいえ、トマトのプリン味。


スウィーツ男子s
(あー、暁から口移ししてもらった方がおいしかった)
(ばか…二度とやってやんないから)


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