ある日の二人



ふと気づけばリビングには郁とミカナギがいた。
あの二人がいるのは珍しい。
何を話しているのか気になって暁はそっとリビングに忍び込んだ。

「罪識のいいところ?あぁ、そりゃもうあの子供っぽさだろうな」
「子供っぽい…またそんなことを言ったら嫌われるぞ」
「くく、そこがいいんだろ。大人びようとして、ちょっと失敗しているところがかわいいじゃないか。お前はどうなんだよ」

どうやら、彼らの恋人の話らしい。
そばのソファに座り、手にあった雑誌を広げて興味のないふりをする。
二人の恋人は双子だ。
さて、どんな話が聞けるのだろうか。

「闇識くんはなかなか笑顔を見せてくれないんだよ。でも時折浮かべる小さな笑顔がいいんだ」
「笑顔ねぇ…罪識のやつは中々かわいらしく笑ってくれないんだよな」
「郁も郁だからな」
「どういう意味だよ」
「さぁな…」
「…ふん、お前だって闇識の前ではへたれてるくせに」
「それは彼が魅力的すぎるから」

ミカナギは小さくつぶやいた。
暁は雑誌の上から目を少しだけのぞかせる。
ミカナギと郁の恋人だという少年には会ったことはない。
響曰く「細くて白くて不思議な人ー」だそうだ。
一方郁の恋人は倖曰く「元気がたくさんある人」だそうだ。

「罪識のヤツは下に組み敷くと頑張って抵抗するんだ。そこがまた支配欲をそそるんだよ」
「闇識くんは俺と並んで歩きたいと言ってくれてね。つまりは俺と対等な存在でありたいと、そういうことだろう?」

ものの見事に会話がかみ合ってないことに気づいているのだろうか。
暁は小さく嘆息した。

「罪識の体は細くてな、ムリをさせると折れそうだ。だが、俺のをくわえているときの声といったら…」
「そんなに無茶させたら彼に嫌われてしまいそうだな。俺は優しく、互いを高めあっていくんだ。彼に触れられたらそれだけでもう天に昇る気持ちだがね」
「昇っていいぞーそのまま戻ってくるな」

会話のかみ合わない二人はそのままヒートアップしていく。
そろそろ聞いているほうも疲れてきた。

「でも、あんなヤツでも愛しく思えるんだから不思議だよな」
「郁?」
「誰も特別なヤツは作らないと決めていたのに…あいつが笑ってるの見るだけでこっちまで笑えてくる。あいつが泣きそうになると、抱きしめたくなる」
「…あぁ、その気持ちはわかるかもしれないな」
「お前もか」
「俺の場合、闇識くんのあのはかなさがどうしようもなく気になる。目を離した隙にいなくなるんじゃないかと気が気でないんだよ。ずっと閉じ込めておきたくなる」

へぇ、と暁は目を見張る。
弟の響を溺愛していたのに、いつの間にかミカナギは弟ではなく彼の恋人を一番に思うようになっているのだ。
対する郁も、今までは自分以外を「下僕」と呼んでいたくせに恋人のこととなると顔つきが変わる。
恋とはここまで人を変えるものなのか。

「…好きってこういうことなんだろうな…あいつに教えられたよ」
「彼がいなかったら俺はずっと一人だったよ…」

二人の様子がしみじみとしたものになる。
ふと暁は恋人の梳識を思い出した。
会いたくなる。
暁は再びリビングを出ていった。
後ろに聞こえたのは二人が席をたつ音。
二人も恋人に会いに行くのだろう。

「あぁでも」

郁はにやっと笑う。
ミカナギも笑みを浮かべた。

「「俺の恋人が一番可愛い」」

ある日の二人
(何を言う。闇識くんのあの笑顔をみてから言え。闇識くんが一番だ)
(お前は目が悪いんじゃないか?罪識のあの子供っぽさがいいんだよ)
(…梳識の明るさが好きだ)


[ 22/39 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -