妻としての役割を



「たまにはマナトも遊んでおいでよ」

聖はそう言って同居している恋人のマナトを追い出した。
そして部屋を見回す。
今日はマナトに休日を楽しんでほしいという思いからだった。

「まずは洗濯かな」

倖に書いてもらった洗濯の方法を見ながら聖は洋服を洗っていく。
自分の服で先に試してからマナトの服を洗っていった。
大きな失敗もなく綺麗に洗えた服をベランダに干したあとは掃除だった。
聖は、エプロンをつけるとさっそく掃除を始める。
部屋の中のほこりを綺麗にとっていき、水がけしてから床を磨く。
思ったよりも大変な作業だった。

「…マナト、いつも一人でやってたんだ…」

冬の半ば。冷たい水によって聖の手は痛む。
息を吹きかけて温めながらも聖は掃除の手を休めない。
弱音を言ってなどいられない。
今日はマナトのために夕食を用意するのだ。

「なにがいいかな」

買いものに出た聖は悩んでいた。
そもそも食べるのだろうかなどという考えはない。
ただ、マナトに喜んでほしいのだ。

「……大好き…」

食材を手に聖は小さくつぶやいた。
何よりも愛しい己の恋人の笑顔を思い浮かべると今日のメニューを思いつく。

「手軽にカレーにしようかな…失敗のしようがないし…」

聖は材料を買うと楽しげに鼻歌を口ずさみながら家へと戻った。



「ただいま戻りました」

マナトが戻ってくると家の中からはなんともいえない香ばしいスパイスの香り。
リビングを抜け、隣接するキッチンをのぞけばピンク色のエプロンをつけた聖の後姿がある。
換気扇を回しているせいなのか、マナトに気付くこともなく聖は料理に没頭している。

「…聖」

声を大きくして名前を呼ぶと聖ははっとして振り向いた。

「おかえり、マナト。今用意終わるからね」
「はい。じゃぁ、僕は着替えてきますね」
「うん、分かった」

部屋に戻り着替えを終えて戻ってきたマナトはテーブルの上にカレーの入った皿を置く聖の姿を見つめた。
その手にはいくつものばんそうこうが貼られている。
そもそも家事全般が苦手だという聖。
洗濯物も綺麗に畳まれて置かれていたし、掃除も終わっている。

「…マナト、できたよ」
「はい」

席に着けばハート型のご飯とその周りを覆うカレーが目に入った。

「聖…」
「いつもありがとう、マナト。これからもずーっとずーっと、一緒にいてね?」

聖はぎゅっとマナトに抱きつき笑顔でささやいた。
マナトは傷だらけの手を握るとそっと聖にキスを送りささやいた。

「もちろんですよ、聖…僕もずーっとそばにいます…」



妻としての役割を
(マナト、カレーおいしい?)
(ん、えぇ、とっても(ちょっと辛すぎます…;))


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