▼ 衣更えの時期
学校が昼までだったその日、白石が家に帰りリビングを通りかかると
キッチンから出て来た母は白石に声をかけた
「くー!ええとこ帰って来たわ」
「なんや?おかん」
「ちょっと、まこ捕まえとき」
「?」
ソファーに寝転んでいたまこを抱き上げると、まこは白石の頬にふわりと頬を擦らせた。
「捕まえたで。おかん」
エクスタと違い、簡単に捕まるまこ。
白石が母に声をかけると、母は庭へと出て行った。
「くー、しっかり捕まえときや」
ふわりふわりと積み重ねられていくのは、洗濯物と
太陽に当たりふわふわになった冬物の布団
「ああ、成る程な」
ふわふわの布団にぴくりと反応したまこに、白石は苦笑した。
そう、まこはふわふわが大好きなのだ。
もこもこした物も好きだが、羽布団や毛布など冬物の物も大好きで
その日、衣更えで夏物を出し冬物をしまっていた母は
布団にまこが乗り、猫の毛がつかない様に白石にまこを捕まえさせたのだった。
「あ…あかん」
「みゃー(ふわふわ布団−!)」
「ちょ、まこ…」
「みゃー(はなしてー!)」
「くー、もう少しやから頑張り!」
母が布団をしまい出すと、まこはピーンと体を伸ばしたり
体をくねらしたり、どうにかして白石の腕から逃げようとした。
白石が必死にまこを捕まえている内に、母は急いで布団をしまっていく。
「まこ、俺の部屋にバスタオルあるさかい、それで我慢しや。な?」
「みゃー(毛布もうしまっちゃうの?)」
白石がまこを抱き直し顔を合わせると、まこはじっと白石を見た。
「ん?ちゅーしたろか?」
「みゃー(なんでそうなるんだ!)」
ぺちっと肉球で挟まれる頬。
白石はくすりと微笑むと、まこを抱いていた手が思わず緩んでしまい…
「あ…!!」
「あ−!もう、なにしよんねん!くー!」
まこは羽毛布団にダイブした。
end
(くーちゃんにキスされて嫌がんのんは、まこだけやね)
(くー、あとで布団コロコロしときや)
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