二日目の朝の事
1月の朝は寒い。これは神奈川も大阪も変わらないようだ。
その日の朝は、とびきり寒かった。制服に着替えた白石に抱き上げられリビングに行く途中に窓から外を見ると昨晩のうちにどうやら雪が積もっていたらしい。
白石は階段を下りつつ外を見てまこの耳元で呟いた。
「外、真っ白やな。まこ、雪見た事あるか?」
少しだけ立ち止まり、窓の外を見る白石と一緒に外を見る。
「(神奈川もたまに雪降ってたよ。庭に積もったの柳と見たし、初詣の時にも降ってた)」
「朝練の前に雪合戦になりそうやな〜」
苦笑した白石は、また階段を下りはじめる。そしてリビングに入ると先に起き出していた母に「おはよう」のあいさつをして、暖かい居間へまこを下ろした。
居間には先に部屋を出ていったエクスタがいた。エクスタは、電気ストーブの前に陣取り手足を投げ出して暖をとっている。
電気ストーブに当たらないギリギリの場所まで手足を伸ばしているが、熱くないのだろうか?
まこはエクスタに近づくと恐る恐る足先に手を置いてみた。
(あったかい)
その場所は相当暖かいらしく、エクスタはそこで二度寝してしまっている。熱を遮るのも可哀想なので移動しようと足を引くと、後ろから手が伸びてきてまこを抱き上げた。
「ストーブに近付き過ぎると火傷すんで」
白石の面影がある顔がアップになり、低音が響いた。白石の父はふわりと微笑むとまこを寝ているエクスタのお腹に寄り添わせるように下ろした。
「エク兄ちゃんが寝てたら教われへんなぁ」
苦笑する顔がどことなく白石に似ている。父はよしよしとまこの眉間を撫でるとリビングへ去っていった。
(ごはんは後でいいや…)
まこはそのまま暖かくなっているエクスタのお腹に頬を寄せて一緒に暖まった。
(いってらっしゃいを言いたいから起きてないと。お見送りもしたい。行く前に撫でてもらいたい)
微睡みの中そんな事を思っていると、いつの間にかテニスバックを抱えた白石が側にやってきてまこに声をかけた。
「今日部活ないし、はよ帰ってこれると思うさかい、エクと仲良お待っとってな」
「みゃー(もういっちゃうの…?)」
エクスタのお腹から抜け出し駄々っ子のように脚の間にすりっと体を寄せたまこに、白石は微笑むとまこを抱き上げ耳元に鼻先を埋めた。
「あったかくしとくんやで」
眠たさと寂しさの混じった瞳。このままぎゅっと抱きしめていたい衝動をなんとか押し込んだ白石はふわりとまこの鼻筋にキスをして弱々しい反撃を甘んじて受けつつエクスタの元へまこを返した。
「行ってきます」
end
第十五回拍手御礼小説