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バレンタインデー


 


2月14日、その日の立海テニスコートにはいつも以上に女子生徒が群がっていた

ざわざわと外から話し声が聞こえる
甲高い女子生徒の声はいつも以上に多く
部室にいたまこはいつもと違う雰囲気にびくびくと耳を伏せた


「みゃー(うぅ…、誰でもいいから早く来てくれないかなぁ…)」


もう授業が終わる時間帯だと思うが、珍しく来るのが遅い柳達にまこは少し不安になる
とりあえず落ち着こうと、猫用ベッドに入り布団に潜り込もうとすれば
外からいつもと違う音が聞こえた


「ただいま、まこー!!」


突然開いた扉に、まこはびくぅっと毛を逆立てた


「おま、ブン太!まこが驚くからいきなり開けんなって柳に言われてるだろ!」


一番に部室に入って来たのは、珍しく丸井とジャッカルだった
いつもと違う音がしたのは、二人が大量に持っている物のせいらしい


「みゃー(ブン太、ジャッカルお帰り)」


布団を抜け出し、まこが丸井の脚へすりーっと体をこすりつければ
嬉しそうににこりと笑った丸井はまこを抱き上げた


「わりーな、まこ、お前の主人はまだ当分部室には来れないぜ」

「みゃ(え?)」

「幸村と仁王もな、さっき女子に捕まってるの見た」

「ま、今日はしょーがねーよな」


そう、なにを隠そう今日はバレンタインデー
女子にとっても男子にとってもテンションの上がる一代イベントなのだ(一部の人間を除いて)

美形揃いの男子テニス部は、普段から女子に囲まれていて
毎年毎年凄いバレンタインを過ごしている為
もう慣れていた(一部の人間を除いて)


「去年一番貰ってたのは幸村かなー」

「次が仁王か?」

「柳も、生徒会入ってるしモテるんだぜ!特に上級生とか大学のお姉様方に」


にっと笑った丸井に、まこは心なしかしょんぼりとしていた
へにょりと垂れた耳をぺたりと頬へ押し付けるまこに、丸井はよしよしとまこの体を撫でてやると制服のポケットから何かを取りだした


「ほらまこ!俺からのバレンタインプレゼント!」

「お前も男の子だもんな、ちゃんとまこにもやるから落ち込むな!」


べつに、チョコが貰えず落ち込んでいた訳ではないのだが
しゅんとしたまこを見た二人はまこを撫でると小さな袋を取り出した
丸井のは、猫用鰹節
ジャッカルのは、猫缶セット
どっちもまこが好きな食べ物だ

ぴんと耳を立て袋に頬を擦らせたまこに、二人はにこりと微笑む


「まこ」


そんな中、ふわりと別の手に掴まれ腕から抜けだしたまこ
後ろから掛かった声と消えていった子猫に二人が振り返れば


「「柳…!」」


そこには、ふわりとまこを抱きしめ耳元へ鼻先を埋める柳がいた


「女子生徒の香水の匂いに酔ったんだってさ」


ふふ、と微笑み後から入って来た幸村も柳同様大量にチョコの入った袋を抱えている
疲れた様に椅子に座った柳は、心なしか顔色が悪かった


「大丈夫かよ柳?」

「まあ、確かに今日の女子の香水の匂いはいつも以上にキツかったな」


まこは柳の好きな匂い袋と同じ匂いがする
柳の落ち着ける匂いだ
柳がまこの耳元で、すぅっと息を吸えば
まこは心配そうに柳に頬をくっつけた


「柳、俺も体力回復したいからまこちょーだい」

「お菓子を食べれば回復するだろ」

「独り占めはいけないよ柳、君はもう体力回復終わったよね?はい次俺」


まこの脇に手を差し込み、にょーんと抱き上げた幸村に柳は渋々手放し頬杖をつく
すると、丸井は何かを思い出したようにあっと声をあげた


「そーいえば柳!今日Aクラスの知的美人って有名な女子に告白されてただろ!」

「…ああ、断ったがな」

「え!?もう返事したのかよ?柳、知的美人な女がタイプだろ?」


もったいないー、だのとぶつぶつ言う丸井に
ちらりとまこを見た柳はふと微笑んだ


「知的美人が好きと言った覚えはないぞ?」

「はぁ?!今までいた彼女皆そうだろ!背が高くて色白で年上!」

「まあ、長く続いた人はいないけどね」

「お前達に言われたくはないな」


まあ確かに、今まではそうだった
けれど…


「まこみたいな子がいれば、俺は本気になるかもな」


END

(それって…、小さくて年下で)

(鈍くて怖がりで)

(ほっとけなくて思わず抱きしめたりキスしたくなるような子が好きって事かな…?)

(((俺も)))


第七回拍手御礼小説







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