荒船隊B
「なんかすっきりしたか?」
ランク戦当日、作戦室へ入ると私の顔を見るなり荒船先輩はそう言った。すっきり…したんだろうか。昼間狙撃場で練習してるとき、東さんにも「調子いいな」って言われたけど……あまり自覚はない。
「五月、入口で止まるなよ」
「あっ…半崎くんごめん」
一緒にいた半崎くんに背中を押されて中に入ると、ほかり先輩に「今日は顔色いいな」と頭を撫でられた。
もしかして……言わなかっただけで、心配してくれていたのだろうか。集まる視線に照れ臭くなって身動ぎすると、「最終確認するぞ」と荒船先輩が全員に声を掛けた。マップがどこになっても、私達のやることは決まっている。
「そろそろ新しい陣形に慣れただろ」
一人一人の顔を見回す荒船先輩の視線が私の前で止まった。「ぐだぐだ悩んでた奴もいたみたいだが…」と続いた言葉にギクリと肩が揺れる。
「いつも通りやればいい」
いつも通りやれば勝てると自信満々に言った荒船先輩にハッとして背筋を伸ばす。
なんて、頼もしい言葉だろうか。
転送後すぐにバッグワームを起動してレーダーを確認する。今回はうちの隊以外に狙撃手はいない。
見つからないよう狙撃地点に向かいながら、いつもより落ち着いている自分に驚いた。
(あまり緊張してない…)
いつもは転送直後はしばらく緊張で手が震えるのだが、今回はそれがない。
ああ……大丈夫だ。
イーグレットを抱え直して一呼吸置くと、いつもより視界がクリアになった気がした。
(20161223)
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