半崎くんと私A
ペットボトルのお茶を買って作戦室へ戻ると、荒船先輩はペットボトルを受け取ってすぐ「狙撃練習してるから用があったら呼べよ」とほかり先輩と一緒に荒船隊の練習部屋に籠ってしまった。……荒船先輩は、私や半崎くんとはあまり狙撃練習しない。後輩だから遠慮されているのだろうか。

「半崎くんー」
「五月もログでも見れば」
「一緒に見る…」

タブレットを操作している半崎くんに近付くと、柿崎隊のランク戦の様子が画面に映っていた。弧月を構える照屋さんが映り、一瞬たじろぐが……きゅっと唇を結んで半崎くんの隣に座る。

「これ……昨日の?」
「そ、見とけって言われただろ」
「……そうだね」

三つ巴となるもう一つの部隊とは何度か当たったが、柿崎隊とは今シーズンになってから初めて当たる。今までと違う動きはないが、ログの確認はするように言われている。

「……きんちょうする」
「初めての対戦でもないだろ」
「う…」
「照屋と一対一なわけでもないし」
「えっ」
「なに…」

なんで、半崎くんも菊地原くんも…私が照屋さんのこと苦手だって気付いたんだろう。そんなにバレバレなのかな、とムスリと口を尖らせる。

「前回対戦したとき切られたから…」
「じゃあ、今回は切られるなよ」
「…自信ない」

照屋さんに寄られたら、生き残る自信ない。

「は?馬鹿?」
「ば、ばか……」

今日だけで何回馬鹿って言われたんだろ。タブレットを置いた半崎くんに恐る恐る顔を向けると、半崎くんは少し怒った顔をしていた。

「なんのための陣形だよ」
「でも…」
「でもじゃない」
「う…」
「じゃあ、荒船先輩や穂刈先輩が五月をフォローしないと思ってんの?」
「…そんなこと言ってない」
「言ってるだろ」
「言ってない!」

声を上げて立ち上がった拍子に椅子が音を立てて倒れた。奥の部屋から「大丈夫ー?」と声を掛けてきた倫ちゃんに震える声で答えてから、そっと椅子に座り直す。

「………ごめんね」
「……」
「ねぇ……ごめんって」

そっぽを向いた半崎くんの服を力なく引っ張ると、不機嫌そうな目が私を見た。

「五月も先輩達をフォローするんだからな」
「うん………半崎くんも」
「当たり前だろ」
「ええと……そうじゃなくて…」
「なに…」
「半崎くんのことも私が助けるからね」
「は…」
「だって、さっきから先輩達のことしか言ってない…半崎くんも私を助けてくれるでしょう?」

私も部隊を助けて、部隊も私を助けてくれる……当たり前のことなんだ。自分の気持ちに押し潰されて、忘れそうになっていた。
自分でも点を取りたいという気持ちは薄れてはいない……けれど拘りすぎてフォローが疎かになってはだめだ。
今の私は狙撃手だ。狙撃手には、狙撃手の戦い方がある。


(…もし五月が危なくなったら助けてやるよ)
(私が!)
(なんでそこで張り合うんだ)
(むぅ…)

20161219
※原作前のランク戦については全て捏造です

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