菊地原士郎と同期の女の子
「がんばらないと…」

本部長が壇上で挨拶している途中、すぐ近くから聞こえた声にふと目を動かすと……隣に立っていた同じ年頃の女は、隊服の裾を握り締めて足元を睨んでいた。そわそわと落ち着かない空気の中で、1人だけ何故か追い詰められたような表情をしていた。


正隊員になるには、所持ポイントを4000まで上げなければいけない―――そう入隊日に説明された次の日、さっそく放課後に何人かの訓練生と対戦していると、見覚えのある顔が対戦相手として目の前に現れた。うわ…ガチガチじゃん。
意気込みは感じられたが、緊張しているのか動きは固い。
コイツ終わったら休憩しよう……そう考えながら後ろに回ってスコーピオンを降り下ろすが、一撃目は避けられてしまった。

(避けれるんだ…)

ガチガチの割には動けてると少し感心しながら止めを刺す。……なんで攻撃止めたんだろ。避けた後、すぐに反撃してきた女の弧月はぼくに当たる直前一瞬ぴたりと止まった。負ける気はしなかったけど、あそこで躊躇しなければかすり傷くらい付けれたのに…。
涙目でベイルアウトしていった姿にため息を吐いてブースを出ると、その女はブースの前で息を切らせて待ち構えていた。……やっぱり涙目だ。

「もう一回勝負して下さい!」

ぐっと拳を握ってそう言った女に馬鹿なのかと顔を歪めた。ぼくはポイント貰えるから別にいいけど……普通勝てそうな相手とやるでしょ。それとも、勝てると思ってるのか。

「ぼくは休憩するから」
「じゃあ、その後!」

まぁいいか…と休憩後にまた対戦すると、さっきよりも女のポイントは減っていた。ぼくが休憩している間に他の奴にも負けたのか…。
一度だけだと思っていた対戦は、負けた後も何度も挑んでくる女によって繰り返されていた。

「しつこいんだけど」
「もう一回…」
「ぼくはもう帰るから」
「だって…」
「帰る」

女の要望に付き合ってやることはない。その場で換装を解いて背中を向けると、「また今度相手して下さいね!」と声を掛けられた。…面倒くさい女と知り合ってしまったな。

「………悔しい」

ロビーを出る直前、女の涙声が耳に届いてきた。


20161205
つづきます

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