影浦隊と私
「なんで五月がここにいんだ?」

手元のジョーカーが描かれたカードを睨んでいると、背後から訝しげな声が掛けられた。

「カゲ先輩…」
「カゲ帰って来たのか!ジュース買ってきてくれよー」
「てめえで行け」
「あがりー!」
「えっ」

目を離した隙にカードが抜かれる感覚がしたと思ったら、手元に残っているのはジョーカー1枚になっていた。うっ……五連敗。
「遊ぼーぜ」と言った光せんぱいは、最初に案内したソファーから移動して光せんぱいのプライベートスペースでトランプを広げだした。それからずっと2人でババ抜きをしていたのだ。

「………今五月のカードの中身見えてただろ」
「見えたんだよ」
「えっ…」
「つーか2人でババ抜きかよ」
「文句あんのか」
「………楽しいの?」

カゲ先輩に続いて顔を出したユズルくんの姿に居住まいを正すと、光せんぱいは「何やってんだよ」とケラケラと笑った。

「えっと……つい」
「あはは…晶面白いな」
「2人いつ仲良くなったの?知り合いだったんだ」
「今日!」
「はぁ?コイツ人見知りだろ」

カゲ先輩の鋭い視線に反射的にビクリと肩を揺らすと、すぐに視線は逸らされた。

「ほらな」
「カゲの目付きが恐いんだろ」
「んだと?」

軽口を叩き合う2人の後ろで、ため息を吐いたユズルくんが部屋の奥へ行こうとしたのを見て、掠れた声で名前を呼ぶ。どうしよう……これじゃ聞こえないよ。

「………ユズル」

何も出来なかった私を他所に、立ち去ろうとしたユズルくんを低い声が呼び止めた。「五月が呼んでるぞ」と言うカゲ先輩の言葉にこちらを見たユズルくんにぎゅっと唇を結ぶ。大丈夫……大丈夫だ。

「お菓子持ってきたから…一緒に食べよ?」
「え…」
「ユズルが食べないならアタシが食べるぞー!」
「………いいよ。ヒカリが食べれば」

眉間にシワを寄せたユズルくんにやっぱり迷惑だったかと肩を落とす。

「はあ!?ほんとにアタシが食べていいのかよ」
「なんなの…」
「晶が…」
「何持って来たんだよ」
「カゲには言ってないだろ!」
「えっと…チョコとか……おせんべいとか持って来ました」
「せんべいくれ」
「あ……どうぞ」

その場でぼりぼりとおせんべいを食べ始めたカゲ先輩に困惑していると、先輩はテーブルの上に置いていた紙袋の中からもうひとつ取り出してユズルくんへと差し出した。

「ユズルも食えよ」
「…………うん」
「座るから詰めろ詰めろ」
「はあああ!?今日だけだからな!」
「………ユズルくん」

お菓子片手に立ったままのユズルくんに恐る恐る声を掛けると、ユズルくんはじっと私を見た後黙って隣に座った。

「………気を使わなくてもいいのに」
「私は……自分のしたいことをやっているだけだよ」
「そう…」
「だから、迷惑なら…言ってね」

ああ…でも、ユズルくんに嫌われたら………立ち直れないなぁ。

「…………迷惑じゃない」

小さな声で、けれどはっきりとそう言ったユズルくんにハッと顔を向けると、手渡されたお菓子の袋を開けようとする姿を目にして強ばっていた顔が緩んだ。



(ええ!?どうしたの…みんなでお菓子パーティー?呼んでよ)
(おっ!ゾエも来いよ)

(カゲ先輩カゲ先輩…)
(あ?)
(ありがとうございました)
(…………なんのことだよ)
(ふふふっ)

20161014

prev
[back/bkm]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -