荒船先輩と鋼さん A
「え?」

作戦室に集められ、唐突に荒船先輩に伝えられた言葉にぽかんと口を開ける。え?ちょっと……待って下さい。え……え?

「せんぱい………今なんて…」
「だから……狙撃手やるとこにした」
「急ですね……」
「他の奴には言ってある」
「え」

固まった顔を倫ちゃんに向けると、苦笑いを浮かべていた。あ……本当なんだ。

「泣くんじゃねぇ」
「う……ごめんなさい」
「動揺すると思って言わなかっただけだからな」
「……はい」

「ランク戦に集中して欲しかった」と言う荒船先輩に頷きながら、手の甲で涙を拭う。
そうか……荒船先輩狙撃手になるのか……。弧月を振るう姿が見れなくなると思うと、寂しくなった。


作戦室を出て連絡通路に向かう途中、ばったり鋼さんと鉢合わせした。ランク戦シーズン終わったのに……本部にいるの珍しいな。

「鋼さん」
「五月………今帰りか?」
「はい………個人戦ですか?」
「まあな」
「荒船先輩に会わないんですか?」
「荒船?」

穏やかに笑うこの人は、知っているのだろうか……荒船先輩が攻撃手をやめることを。

「荒船とは、今日は約束してないな……部隊ミーティングだったんだろ?」
「はい………さっき終わりました」
「会えたら個人戦誘おうかな…」
「えっ」
「え?」
「あ……なんでもないです」

不思議そうに見詰める黒い目から視線を外して、足元に落とす。なんか……聞きづらい…。

「………荒船と何かあったのか?」
「ちがいます」
「また怒られた?」
「……ちがいます」

またって……私そんなイメージなのかな…。荒船先輩がポジションを変えることを私にだけ知らされていなかったことは、少しだけショックだった。別に先輩たちは、意地悪で隠してたわけじゃない……分かっているよ……。でも、急に言われたって納得できない。視界が滲んでいくのに気づいたが、抑えられない。

目の前のこの人に……困った顔、させたくないのに。

(20160627)

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