狙撃手合同訓練 A
「くやしいー!」

捕捉&掩蔽訓練を終え、隣のブースから出てきた半崎くんに体当たりをすると、半崎くんは胸元の私の番号が書かれたスタンプを見ながら「悔しいのはこっちだから」と口を尖らせた。しっかり撃ち返して来たけどね!

「五月、半崎ー!おつかれー!」
「………」
「なんで無視するの!」
「撃ち返したの避けるから!」
「訓練!」
「……だる」

二階のブースから笑顔で降りてきた佐鳥からフンと顔を背ける。最近は負けてばかりだ。「晶ちゃん見つけられなかった」と太一くんは肩を落としたが、ランク戦で生かされていなければ意味がない。佐鳥は、訓練でもランク戦でも活躍している。………私はまだ一度も自分でポイントを取ったことがなかった。だめだなぁ……小さくため息を吐くと、急に頭に重さを感じた。

「行くかミーティング」
「ほかり先輩?」

声の持ち主の名前を呟くと、頭に乗せられている手に力が込められた。

「なんですか、もう……」
「んー」
「……動けないです」

ミーティング…行くんじゃないんですか……。助けを求めて半崎くんに視線を向けるが、じっと見てくるだけで何も言おうとはしない。なんなんだ……、

「あまり落ち込むなよ」

そう言ってぐしゃりと頭を撫でたほかり先輩に目を丸くする。あ……励まされてるのか……。
「先に行く」と行って離れたほかり先輩の背中を見ながら、少し乱れた髪を整える。………落ち込んでたのがばれて、照れくさくなった。

「二人とも、私たちミーティングだから行くね」
「五月ー」
「なに?佐鳥」
「オレ、次も負けないよ」

にかりと笑ってそう言った佐鳥に一瞬面食らったが「私も負けない!」と叫んで、半崎くんの手を掴んで走った。なんだか、笑えてきたよ。

追い付いたと思ったら、またすぐに離されて……先を行く先輩達の姿を追いかけるのに必死だ。
いつも一人で勝手に落ち込んで、その度に誰かに背中を押されている。
追い付いたほかり先輩の背中に飛び付くと、先輩は笑いながらそのまま私を背負った。

「ひゃあ……高い」
「なにしてんすか」
「よし…行くか」
「荒船さんに怒られるんじゃ…」
「いいだろうたまには」

背負われたまま通路を進むと、数人とすれ違ってぎょっとしたような目を向けられた。

「………楽しい」
「楽しいのか…」

おんぶなんて幼少期以来だ……懐かしい。
呆れたように見上げてくる半崎くんの頭に手を置くと、「身長縮む」と怒られた。うん……ごめん…。
そのまま作戦室に到着した私たちを見て、荒船先輩は「お前ら何やってんだ」と叱ったけど、そのことすら楽しかった。


4月末―――今シーズンのランク戦もあと数回で終わりだ。
転送までのカウントダウンが始まり、震える手で胸を押さえて大きく深呼吸をする。

「あー……緊張する」

この転送直前の時間は、いつまで経っても慣れそうにない。ぐっと目を瞑ると、背中を強く叩かれた。目を開けば、倫ちゃんもほかり先輩も半崎くんも私を見て笑っていた。

「やるぞ」

背中に触れる荒船先輩の大きな手が……力強く私を押した。

(20160531)

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