半崎くんと私
「とっきーがんばってね………佐鳥も」
「ついでみたいな言い方!」

校門の前で広報の仕事をしに行く二人と別れて、半崎くんと本部へと向かう。今日は非番で、チームミーティングもないけれど……誘えばこうして着いてきてくれる。持つべきものはチームメイトだね。

「おーい、二人ともー!」

遠くから掛けられた声に後ろを振り向くと、駆け寄ってきた太一くんが「途中まで一緒に行こー」と隣に並んだ。

「支部行くの?」
「うん!二人は?」
「本部で狙撃勝負ー」
「…はぁ?勝負するのダルい」
「勝ち逃げ……」
「睨んでもやらないからな」
「何しに本部行くつもりだったの!?」
「普通に狙撃練習するつもりだったけど」
「勝負……」
「次の合同訓練のときにでもやればいいだろ」
「はいはい!おれもやる!」
「え……太一くんには負けないよ」
「お、おれだって負けない!」

半崎くんとの勝負は、次の合同訓練までお預けのようだ。……いいもん、半崎くんも太一くんも佐鳥もまとめて負かす!

「晶ちゃんー半崎ー!また明日ー!」

こっちを向きながら別れ道を進んで行く太一くんに「前見て歩いて!」と声を掛けると「大丈夫〜」と気の抜けた声が返ってきた。あっ、電信柱……。ぶつかる直前に前を向いた太一くんは、目の前にある電信柱に驚いて足を躓かせていた。本当に大丈夫なのか、とはらはらしながらよろける太一くんの背中を見ていると、「オレらも行こう」と半崎くんは本部へと向かう道へと足を向けた。

「待ってよー」
「ダルい…」
「なんで!」
「……………仲良くなったよな」
「え?」
「別役」
「太一くん?まぁ……隣の席だしね」
「名前で呼んでるし………呼ばせてるし…」
「あだ名だよー」
「あだ名ね…」

私が名前で呼ぶようになったら、「じゃあ、おれも!」と言って太一くんも私を名前で呼ぶようになった。最初は気恥ずかしかったけれど、あだ名だと思えば気にならなくなった。

「半崎くんもあだ名つけてほしいの?佐鳥に頼む?」
「なんで佐鳥…」
「あだ名つけるなら、とっきーみたいな可愛いのがいいな」
「いらない」
「半ライス」
「……怒らせようとしてんの?」
「………お腹空いた」
「はぁ……コンビニよるか」
「チョコ……」

そっと手のひらを出すと、「いや、持ってないから」と呆れたような表情を向けられた。だって……昨日は持ってた!

「コンビニな」
「えー」
「じゃあ腹空かせたままでいいな」
「…コンビニでいい」

今日涼しいからチョコ溶けないよな…。曇ってきた空に雨が降らないか心配になる。

「雨降るかなぁ」
「予報じゃ夜からだったけど」
「傘持ってきてない」
「オレも」
「……………あだ名どうしようか」
「まだ考えてたのか」
「面白くないけど………よしとくん?」

あだ名っていうか名前だけど……と隣に顔を向けると、そこには誰もおらず半崎くんは少し後ろで足を止めていた。目を見開いて凝視してくる半崎くんに居心地が悪くなって顔を逸らした。………気に入らなかったのか。


(………………………今まで通りでいい)
(えー)

20160522
名前知ってたのか

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