となりの別役くん
「えっ……県外から来たの?」

スカウトされてわざわざ三門市に来るなんてすごいなぁ……。ただのドジっ子じゃなかったのかと、机の中を探るべつやくんを眺める。

「数学の教科書ないー」
「…忘れたの?一緒に見る?」
「ありがと!」

そう言ってべつやくんが机をくっつけた拍子に私の机も少し揺れた。勢いよく動かしすぎ!

「五月さん、数学好き?」
「きらい」
「おれもー」
「勉強きらい」
「おれも!」

「一緒だ」と言われても全然嬉しくない。まだ入学して数日しか経ってないのに既に挫けそうだ。勉強着いていける気がしないと倫ちゃんにぼやいたら「荒船くんに教えてもらうといいよー」と笑顔で言われた。倫ちゃんは教えてくれないのか……そうなのか……。

「あと、今日の合同訓練一緒に行ってもいい?おれ、まだここから本部まで行ったことないんだ」
「同じ隊の先輩も一緒だけどいい?」
「いいよ!鋼さんもいるから!」
(……鋼さんと二人で行けばいいのでは)

「べつやくんは……」
「それ!」
「え!?」
「また間違えてる」
「あ………?べつやくくん」
「あってるけど………もう名前でいいよ」
「え、やだ」
「太一だよ!」
「え」
「太一」
「えー…」

名前?名前で呼べと言いたいの?なんで?

「おれ名前の方が呼びやすいってよく言われる」
「確かに」

そんなに深く考えることないのか?べつやくくんって……言いづらいし……よく間違えるし…。

「うん……名前にする」
「へへへ」
「あ、太一くん先生来た」

教室に入ってきた教師に気付いて、数学の教科書を二つの机の間に置くと、前の席に座った佐鳥くんが顔を青くして振り向いた。

「ねぇ!ちょっと二人とも待って!」
「佐鳥くん前向いて」
「なんでオレがトイレ行ってる間に仲良くなってんの!?」
「授業始まる……」
「そんなさらっと……名前呼び……オレも…」
「…………………………うん、分かった」
「え!」
「佐鳥」
「え」
「佐鳥」
「あ……………うん」

(名前じゃないのか……)

20160510

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